アラバマアカハラガメという亀がいます。
英語では、
Alabama red-bellied turtle。
お腹が赤みを帯びた、
大型の淡水ガメです。
派手なスターみたいな見た目ではない。
でも、
どこか落ち着いた美しさがある亀です。
この亀には、
少し切ない特徴があります。
生きられる場所が、
かなり限られているんです。
名前の通り
アメリカ南部の
アラバマ州沿岸と
隣接するミシシッピ州沿岸の
ごく限られた水系に暮らしています。
世界は広い。
川もたくさんある。
湿地もある。
水辺もある。
でも、
この亀が安心して暮らせる場所は、
そんなに多くない。
しかも、
どんな水辺でもいいわけではありません。
浅い場所
水草がある場所
水質が保たれている場所
流木や隠れ場所がある場所
産卵のために陸へ上がれる場所
そういう条件がそろって、ようやく生きていける。
人間にもいますよね。
どこでもやっていける人
どんな集団にも馴染める人
すぐ友達ができる人
環境が変わっても平気な人
正直、かなり羨ましい。
でも、
自分はどちらかというと、
そういうタイプではありませんでした。
どこでも大丈夫ではない
誰とでも平気ではない、陰キャ
どんな場所でも呼吸できるわけではない
うつで休職した時、
それをかなり思い知りました。
職場に行けなくなった
人と会うのもしんどい
元気な人の輪の中にいるのが苦しい
普通に見える場所が、自分にはきつかった。
世界は広いはずなのに、
自分が安心して息をできる場所は、
かなり少なかった。
でも、
その少ない場所には
確かに救われました。
家
図書館
朝の散歩道
本
note
同じように苦しんだ経験を持つ人との会話。
そこにいる時だけ安心できた。
完全に元気になったわけではない
全部が解決したわけでもない
でも、
少しだけ、
心が穏やかになる感じがあった。
昔の自分は、
そんな自分を責めていました。
もっと強くなれ。
もっと社交的になれ。
どこでも平気な人間になれ。
環境のせいにするな。
でも、
アラバマアカハラガメを見ていると、
少し違う気がしてくる。
この亀は、
弱いから苦しいわけではない。
価値がないから、
居場所が少ないわけでもない。
ただ、
生きられる条件が限られている。
水が汚れる
水草が減る
湿地がなくなる
道路で命を落とす
産卵場所にたどり着けなくなる
そうやって、
暮らせる条件が崩れると、
一気に苦しくなる。
これ、
人間も同じじゃないか。
しんどくなる人に、
「もっと強くなれ」
と言うのは簡単です。
「気にしすぎ」
「考えすぎ」
「甘えている」
「みんな頑張っている」
そう言うのは簡単です。
でも、
本当に必要なのは、
その人を無理やり強くすることではなく、
その人が呼吸できる条件を守ることなのかもしれない。
安心できる場所
話を聞いてくれる人
静かにいられる時間
責められない関係
自分のペースで戻れる場所
それがあるだけで、
人は少し生きやすくなる。
アラバマアカハラガメは、
今も強い絶滅リスクの中にいます。
現状を十分に追えているとは言えない部分もある。
それでも、
湿地の減少
水草の減少
道路死
巣の捕食
海面上昇などの脅威が続いている。
つまり、
この亀に必要なのは、
「もっとタフになれ」
ではない。
水辺を守ること
水草を守ること
産卵場所を守ること
移動できる道を守ること
生きられる条件そのものを守ること
ここが、
自分にはかなり刺さりました。
人間も、
同じじゃないかと思うんです。
本人の根性だけで、
なんとかなることばかりではない。
環境が合わなければ、
心は削られる。
居場所がなければ、
人は簡単に干からびる。
だから、
自分に合う場所を探すことは、
わがままじゃない
弱さでもない
甘えでもない
生きるために必要な、
かなり切実な作業です。
自分にとって、
noteやSubstackは、
そういう場所の一つでした。
大きな場所ではない。
有名な場所でもない。
でも、
自分の言葉を置ける。
自分の弱さを少し出せる。
誰かが読んでくれることもある。
同じように苦しんだ人と、
そっとつながれることもある。
広い世界の中で、
自分が呼吸できる小さな湿地。
そんな感じがしています。
もちろん、
ネットがいつも救いになるわけではありません。
比べて落ち込むこともある。
強い言葉に傷つくこともある。
見すぎると疲れることもある。
だから、
大事なのは、
場所そのものよりも、
そこが自分に合っているかどうか
呼吸できるか
安心できるか
少し自分に戻れるか
そこなんだと思います。
居場所が少ないことは、
恥ずかしいことではない。
どこでも生きられないことは、
欠陥ではない。
ただ、
自分に合う水辺が必要なだけ。
アラバマアカハラガメは、
広い世界の中で、
限られた水辺に生きています。
浅い水
水草
湿地
流木
産卵できる場所
その条件がそろって、ようやく生きていける。
人間も、きっと同じです。
家
学校
職場
地域
図書館
note
substack
誰かとの会話
どこでもいいわけじゃない。
自分が少し息をしやすい場所。
自分を責めすぎずにいられる場所。
また明日を迎える力を、
少しだけ取り戻せる場所。
そういう場所を、
一つでも持っていたい。
アラバマアカハラガメを見ていると、
そう思います。
居場所が少なくてもいい。
理解してくれる人が少なくてもいい。
世界中に馴染めなくてもいい。
でも、
自分が呼吸できる場所だけは、
失わないでいたい。
そして、
誰かにとっての小さな水辺を、
簡単に奪わない人間でいたい。
広い世界なのに、
息をしやすい場所が少ない。
それでも、
その場所が一つでも残っているなら、
人も亀も、
もう少しだけ生きていけるのかもしれません。









