このパーティゲーはガチで流行るかも! 『Vikings on Trampolines』のシンプルながら奥深い対戦モードについて
『Owlboy』の開発スタジオによる新作
ストーリー重視の2Dアクションアドベンチャーゲーム『Owlboy』(レビュー)は2016年の筆者が最も大好きなゲームのひとつだった。ノルウェーのインディー開発チームD-Pad Studioが10年をかけて作ったこの野心的な作品は美麗な2Dアート、豊富なシューティングメカニクス、『ゼルダの伝説』を彷彿とさせる謎解き、エモーショナルなストーリーなど、様々な見どころを内包していた。2017年にBitSummitで彼らに動画インタビューしたことが、筆者にとってIGN JAPAN初期の大切な思い出となっている。
そんな『Owlboy』から再び10年が経過し、D-Pad Studiosが久々にBitSumitに出展することとなった。しかし、彼らが持ってきた新作『Vikings on Trampolines』はおよそ『Owlboy』の開発チームのゲームとは想像もしなかったような作品だ。いや、確かに相変わらず2Dアートは魅力的だし、バイキングは彼らの出身地である北欧に昔いたのだが……。
しかし、ストーリー重視でエモーショナルな作品だった『Owlboy』と、バイキングがトランポリンの上を飛び跳ねるコミカルなパーティーゲームは、かなり方向性が違う。ストーリーも特になさそうで、ごっついバイキングたちがなぜか陽気にトランポリンの上を飛び跳ねているだけである。
『Owlboy』はシューティングから謎解きまでできることが多いし、場面によって様々な操作を求められるゲームだった。一方で、『Vikings on Trampolines』はアナログスティックしか使わないようで、トランポリンの上に着地してから左右に動いたり、上方向を入力して空中にいる時間を伸ばしたり、下に急降下したりする程度の操作しかない。ルールも至ってシンプルで、どのステージやモードで遊んでも「トランポリン以外の床に着地してはいけない」ことが共通している。

筆者は4年前にドイツのゲームイベントgamescomでも『Vikings on Trampolines』を試遊した。今回、BitSummit PUNCHの配信で久々に遊んで、最初は少し残念な気持ちになったことは否定できない。10年待った大好きな開発チームの新作となると、どうしても同じような系統のゲームを期待してしまう。そう、私はパーティーゲームなどを求めていなかったのだ。遊び始めて最初の数分間は、単純なゲームコンセプトや操作系もあまり広がりがないような印象を抱いてしまった。
しかし、なんといっても『Owlboy』ほどの傑作を生み出すD-Pad Studioのゲームだ。
「俺、舐めてたな……」
そんな感想を抱いて、試遊を終えることとなった。
というのも、本作の「バーサスモード」が最高に楽しかったからである(ステージクリア型のシングルプレイモードは残念ながらほとんど触れていないので、そちらについてはまた別の機会で試したい)。

バーサスモードは最大4人でプレイ可能で、相手にぶつかってトランポリンがない地面に突き落とせば一機減るという単純明快なルール。アイテムがときどき風船からぶら下がって落ちてくるのだが、ゲットできればばかなり有利になる。ハンマーで相手を遠くまでふっ飛ばしたり、体が膨らんで接触しただけで相手を画面の外に送ったりと、「アイテムをもった相手と接触しただけでほぼ即死」と言っても過言じゃない。
ここまで読めば、おわかりいただけるだろうか。そう、体力ゲージを削るのではなく相手を吹っ飛ばすというルール、落ちてくるアイテムを利用するという流れは、「大乱闘スマッシュブラザーズ」シリーズに近い。しかし、蹴ったり殴ったり投げたり必殺技を使ったりといった操作は一切ない。言ってみれば、「スマブラ」のエッセンスを内包しつつ、難しさを限りなくゼロにしたパーティーゲームである。
筆者はこの記事を書くまですっかり忘れていたのだが、2022年のgamescomで書いたインタビュー記事を読み返すと、そこには本作のクリエイターであるジョー・レミ・マドセン氏のこんな発言が書かれていた。
「妹にとって、スマブラの操作が難しすぎたんです。そこで僕はアナログスティックだけで遊べる対戦ゲームを作れないかと考えました。あれが僕の初めてのゲームコンセプトでした」
2026年に本作を再び遊んだ筆者は、まさにそのような感覚を抱きながらプレイしていた。
しかし、その過程でゲーム体験の奥深さは犠牲になってしまわないか? 最初のステージを遊んだ段階では少し心配だったが、いろんなステージを遊んでいく過程でその心配は徐々に吹き飛んだ。クルクル回転する塔、高速で移動するジェットコースター、激しく揺れる帆船など、無茶なステージ上にそれでもトランポリンが配置され、相手にふっ飛ばされなくても落下しないように必死になる。

そんな状況のなかでもプレイヤー同士で邪魔し合う駆け引きは、常に笑いと叫びを誘うものだった。ほぼ無敵状態になると思われていたアイテムも、より歯ごたえのあるステージではむしろ自滅するきっかけにもなりかねない。アイテムが浮遊している場所へ移動するだけで危険だし、機動力が著しく低下するアイテムもあるので、「とるべきか否か」が重要な駆け引きとなる。ついつい欲張って事故を起こしたり、タイミングよくゲットしたアイテムで周囲の相手を全員ふっ飛ばしたりなど、意図的であるかどうかにせよ、思わずニヤニヤする展開には事欠かない。
先述した通り「スマブラ」のように難しい操作がないのだが、同程度の奥深さが楽しめるのかというと、たぶんそうではない。だが、ステージやアイテムがもたらす「実力と事故」の絶妙なバランスが、まさに優れたパーティーゲームに必要なものだ。4人で同時に楽しむと最高に盛り上がるだろうし、操作も簡単なので老若男女が一緒になってすぐに楽しめる。
なお、「バーサスモード」のステージを規定数進めると協力型のステージに突入する。一緒にボスの撃破を目指すこうしたステージは「スマブラ」よりもカプコンの名作「パワーストーン」を彷彿とさせる。勝てないプレイヤーたちも、最後はチャンピオンと一緒にボスを倒して気持ちよく終われるわけだ。そうしたサービスも、パーティーゲームらしいバランスと言えるだろう。

『Owlboy』のクリエイターの新作として意外性たっぷりであることは間違いないが、『Vikings on Trampolines』は実に優れたパーティーゲームに仕上がっているようだ。「これ、ガチで流行るかも」という感想で試遊を終えた筆者は、早く娘と一緒にプレイしたいと思っている。
