上田文人新作『gen ATLAS』はオープンワールドで、どちらかといえば『ワンダと巨像』に近いゲームタイプになる?

巨大なロボットと壮大な時間

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『ICO』、『ワンダと巨像』、『人喰いの大鷲トリコ』(レビュー)の3作品で知られるクリエイター、上田文人氏。彼の新作『gen ATLAS』がついに正式発表され、2分弱のトレーラーが公開された。

しかし、依然として謎が多い。トレーラーはヒントこそ与えてくれているが、「どういうゲーム体験なのか」、「どんなストーリーが描かれるのか」など、多くの部分は現段階で想像の域を出ない。

僕はSummer Game Fest 2026で上田氏にインタビューする機会に恵まれた。このようなゲームは「プレイするまでどういう体験が待っているのかわからない」ことがむしろ大きな魅力にもなり得る。しかし、インタビューというのは、野暮を承知のうえでもその正体に迫ろうとする仕事だ。上田氏は多くを語りすぎず、しかしそれでも『gen ATLAS』というゲーム体験が少し垣間見える回答をしてくれた。

「『gen ATLAS』ではヒューマノイドの主人公とロボットの物語を描いています」

上田氏のこれまでに手掛けたゲームでは人間が主人公だった。『ICO』では人間同士の繋がり、『ワンダと巨像』では孤高に大きな困難に立ち向かう若者の勇姿、『人喰いの大鷲トリコ』では人間と動物の絆を描いてきたと言えるだろう。しかし、今作ではそもそも「人間」を描いておらず、自我のないヒューマノイドが主人公となる。

「過去作のようにキャラクター同士の関係にはそこまでフォーカスしておらず、どちらかといえばプレイヤーとゲームにいる存在の繋がりを大切にしています。テーマは『巨大なロボットと壮大な時間』です。人間ではない主人公なので、寿命がないんです。壮大な時間を過ごすことになるので、そこで何かを感じてもらいたいですね」と上田氏。

寿命がなく、ほぼ永遠に生き続ける主人公。上田氏の説明を聞くと、僕は思わず『クロノ・トリガー』で400年も砂漠を耕し続けたロボのエピソードを思い出した。

上田氏のゲームは、ほとんど言葉を用いないことが多い。『人喰いの大鷲トリコ』の過去を振り返る主人公の声など、一部例外こそあるが、いわゆる会話劇は基本的に存在しない。

「今回、言葉はもう少し出てきます。過去作で言葉があまりなかった理由としては、リアリティを追及するうえで、(ゲームプレイ時に)キャラクターが同じセリフを言い続けると不自然なので排除してきたんですよ。今回はSFがテーマで、ロボット同士の会話ならそこまで不自然にならないという特徴があります。ロボットとして何かを記録するといった、過去作ではできなかったことも取り入れていますし、テキストによる情報もあります。ただ、説明過多にはなっていないので、そういう意味では過去作とテイストは大きく変わらないと思います」

上田氏の過去作では、謎解きなどにおいても目的が言葉では示されず、一部のプレイヤーが困惑することもあった。

「視覚的なヒントも使っていますけど、過去作ではジェスチャーだけでは伝わりにくいこともありました。そこは反省点でもあるので、現代のプレイヤーにあわせて作るように意識しています」と上田氏。

しかし、そもそも『gen ATLAS』における「謎解き」とはどういう遊びなのか? これについて上田氏は詳細を明かさなかったが、基本的なゲームの流れを説明してくれた。

「あまり説明しすぎるわけにはいかないんですが、主人公と巨大な頭が廃墟の世界を冒険します。世界にはいろんなロボットのボディが落ちています。巨大な頭を、いろんなボディに接続することでそのボディが起動して、その能力を使ってバトルやパズルに繋がるんです」

一体のロボットを仲間にするのではなく、巨大な頭を様々なロボットのボディに装着し、そのために世界を飛び回るというわけだ。

トレーラーでは頭が空を飛んで移動しているところを確認できる。上田氏によると、プレイヤーは基本的には自由に世界を飛び回ることができる。

「オープンワールドを目指して作ったわけではないんですが、形としてはオープンワールドと言ってもいいと思います。ただ、いろんなサブクエストやミッションがあるタイプのオープンワールドではありません」

自身もゲームをプレイする上田氏は、「同じ感動が得られるなら、短い方がいい」という思想の持主だ。そういう意味で、『ワンダと巨像』と似たフィールドを想像すると良さそうだ。

しかし、フィールドの構成そのものが『ワンダと巨像』と近かったとしても、世界観そのものはこれまでの上田作品とかなり違う。

「『ICO』、『ワンダ』、『トリコ』は城や遺跡が舞台でした。僕がプレイヤーだったら、次も似たような設定だったら「またか……このパターンね」と感じると思うんですよ。作る側としても、「また遺跡を作るのか」みたいな気持ちになるので、巨大なロボットというテーマを考えたんです。エンターテインメントとして常に意外性、プレイヤーの予想を裏切りたいというところはありますね」

これまでの作品がファンタジーだったのに対して、『gen ATLAS』はSFだ。しかし、上田氏自身にとって、これはそこまで大きな違いではないと言う。

「巨大なロボットというコンセプトがあったので、結果としてSFにはなりましたが、自分が作りたいのは『現実世界にないもの』なので、ファンタジーでもSFでもそんなに大きな違いはないと感じています」

ゲームを作るうえで、上田氏は自分がプレイヤーとして感じた刺激も参考にしているという。本作にシューティングの要素があるのも、上田氏自身が「体感原理としてそういう遊びがしたかった」ことがきっかけのひとつになっているらしい。

「戦闘が中心というわけではないんですが、過去作に比べると多いとは思います。そうは言っても、ガチで反射神経を求めるものというよりは、パズル寄りの戦闘ですね。若干、反射神経を求める部分もちょっとありますけどね。世界をリアルに感じてもらうための要素のひとつとしてのシューティングです」

戦闘の割り合いが高めであるという点からも、『gen ATLAS』はとちらかといえば『ワンダと巨像』に近いゲームになるかもしれない。

「映画でも、気分によって観たいものが違うじゃないですか。楽しい映画を観たいときと、考えさせる映画を観たいときがあると思いますが、このゲームでは両方がほしいと考えました。考えさせられる部分と、ゲームとしての爽快感が担保される部分。そういう意味でも『ワンダ』に近いのかなと思いますね」

『人喰いの大鷲トリコ』が2016年に発売してから10年。ただし、『gen ATLAS』の開発そのものに10年がかかっているわけではない。genDESIGNとして独立して、最初はスタジオの構築、研究開発、いくつかのアイデアの技術検証やプロトタイプ作成を経て、『gen ATLAS』の開発が正式にスタートしたのは2020年だという。

「スムーズな開発経験をしたことはないんですけど、ソニーにいた頃と違うのは、Unreal EngineやUnityといった既存のエンジンが使えることですね。今回はUnrealを使っているので、すべてをいちから作る必要がなくて、自分たちがフォーカスしたい、この作品のユニークな部分に力を注げるのは助かってます」

『gen ATLAS』の開発がコロナ禍の真っ最中にスタートしたということになる。しかし、少なくとも上田氏本人はコロナの影響で「壮大な時間」や「廃墟化した人のいない世界」といったコンセプトを思いついたわけではないという。

「ヒューマノイドとロボットのゲームにしたのは、単純にそういう設定が好きだからというわけではありません。僕はあまりひとつのことで決めたりはせず、いろんな理由があって設定を選んでいます」

近年のAIの発展も、そのひとつに含まれるという。

「すごくリアルな世界線として、このさきAIやロボットの存在感も大きくなると思うので、それについていろんな想像や妄想」をし、ゲームに反映しているようだ。

上田作品は頻繁に「アート」と呼ばれるが、本人としてはアーティスティックな見た目でありながら、根本にあるのは誰しも興味の持てるテーマだという。

「『ICO』なら少年と少女の出会い。恋愛の物語を描いているわけではないんですが、そういう風に見える構造になってますね。『ワンダ』なら巨大な生き物。これも、誰しも興味をもってもらえるモチーフだと思います。『トリコ』はかわいい動物ですね。これは嫌いな人がいないでしょう。次はなんだと考えたときに、ロボットをテーマにしたゲームを作ろう、と思い立ったんです」

Ueda last worked on the PS4 exclusive The Last Guardian.

上田氏のゲームは感動的なストーリーでも知られているが、実はシナリオが豊富な作品ではない。『ICO』の例のように、壮大な恋愛物語があるわけでもないのに、「手をつなぐ」といったゲームのインタラクションなどを通して、そのように感じてしまう。

「実は、シナリオとゲームは基本的に合わないものだと思っています」と上田氏。

「誰かが発明しない限りはかみ合わないものだとあきらめていますね。ただ、俳句や短歌のような表現ならゲームでも表現しやすいと思います。細かいディテールは書かれていないけど、自分の経験に当てはめて想像することのできる。そういうものであればゲームにそこまで無理なく描けると思っています。過去作もそのような描き方をしてきましたし、『gen ATLAS』もそのような表現になっています」

『gen ATLAS』はPC(Epic Gamesストア)/PS5/Xbox Series X|S向けに発売予定だ。続報を楽しみにしたい。

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