「鬼武者 Way of the Sword」開発者インタビュー!侍アクションの進化と「鬼武者らしさ」の再定義
魂を吸い、一閃を放つ
『鬼武者 Way of the Sword』はPS2を中心に展開された戦国ファンタジーアクションゲームの久々となる新作だ。gamescomで本作を実際にプレイして、主人公を務める宮本武蔵によるダイナミックなアクションや豊富なモーションに驚かされ、本イベントでも特に記憶に残るタイトルとなった。試遊のあと、プロデューサーを務める門脇章人氏とディレクターの二瓶賢氏にインタビューする機会に恵まれたので、ぜひ読んでほしい。
――本日はよろしくお願いします。おふたりがこれまでに「鬼武者」に関わったことはあるのでしょうか?
二瓶氏(以下、敬称略):ふたりとも初めてになります。
――PS2世代のIPなので、それはそうですよね。このシリーズを復活させることになった経緯をぜひお聞きしたいです。
門脇:「鬼武者」の新しい作品を作りたいというアイディア自体はずっと前からありました。しかし、昨今のゲームはプロジェクトの規模が大きくなっていて、たくさんの人数が必要になりますし、ゲームを1本作るのに何年もかかるので、なかなか作り始められなかったんですね。そこで、ちょうど2020年に人が集まるきっかけがあって、開発環境としてはREエンジン(カプコンの自社エンジン)も成熟してきたので、やってみようかということになりました。
――当時プレイしていたひとりとしてとてもうれしいですが、今となって当時のゲームプレイがそのまま通用するわけではないと思います。「鬼武者」らしさと現代のアクションらしさのバランスについて教えてください。
二瓶:まずは「鬼武者らしさとは何か」をチームで整理するところからスタートしたのですが、「篭手を付けて魂を吸収するシステム」と、「一閃」という必殺技の気持ち良さはシリーズを通してずっとあったので、そこは今作でもしっかり作っていきました。新しいところとしては、侍らしいチャンバラを描くことを大事にしたかったので、どうやったら新しいものができるのかということについていろいろ考えてきました。最近のゲームはパリィで弾くという作品がたくさんあるのですが、私が作りたいと思ったのは、片手で受け流したら敵が壁にぶつかってダウンしたり、ほかの敵にぶつかって巻き込まれたりすることで、新しい遊びを体験できるようなアクションですね。
――そこはプレイしていてすごく伝わりました。同じ受け流すアクションでも、環境に応じて違うことが起きたり、距離や配置によってモーションが変わったりなど、モーションが臨機応変に入れ替わるのには驚きました。
二瓶:ありがとうございます。今回、侍のリアリティをちゃんと表現したかったので、右から攻撃がきたらちゃんと右に対して防御をするとか、背後からだったらちゃんと背中にガードをするとか、そういったことは6年くらい前からずっとこだわってやってきました。
――確かに、ほとんどのゲームならガードさえしていれば後ろから攻撃されても自動的に方向を変えてくれるのですが、本作は常に方向を意識しないといけないのが新鮮でした。
二瓶:そうですね。さらに、ガードだけじゃなくて、受け流しも「ここから受け流して前に投げる」など、いろんなバリエーションがあります。しかも敵ごとにリアクションが違うので、そこは新しいアクション表現と感じていただけるんじゃないかなと思います。
――距離や環境によってモーションが変化するアクションといえば、『Sifu』を思い出します。『Sifu』が出たときはすでに開発中だったと思いますが、似たようなデザイン哲学を感じたのでしょうか。
二瓶:はい。開発期間中もいろんなゲームをプレイして、思想がちょっと似ているのはうれしいところでもあり、「さすが」と思うところでもあります(笑)。もちろん『Sifu』もやりました。とてもカッコいいゲームでした。
――ほかの作品でいうと、『Ghost of Tsushima』をきっかけに侍を主人公にしたゲームがブームになりましたが、本作をどれくらい意識したのでしょうか?
二瓶:着想した2020年はまだ『Ghost of Tsushima』が出る前だったのですが、海外の方があんなに優れた日本の武士道のゲームを作ったことをすごくリスペクトしています。ただ、お互いに同じようなこだわりもありながら、本作はダークファンタジーなので、侍だけの戦いで描けないチャンバラにしっかりとこだわってきました。
――ここまでモーションの多彩なゲームも珍しいと思いますが、その制作秘話が気になります。
二瓶:斬るアクションだけにこだわっているのはもちろん、待機モーションから血振りまで「武蔵らしさ」を描きたかったです。武蔵なので、型通りの動きよりも少し荒らしい感じのモーションを意識しています。
――リアルな剣術や居合術も参考にしているのでしょうか。
二瓶:もちろんです。今作で大事にしていたのは、僕らが創作で雰囲気を作っていくということはやめることでした。
モーションキャプチャーをするたびに、剣や居合の達人をお呼びし、真剣を使っていただきました。
彼らとディスカッションして、実際にどういう動きをするのか相談しながら作っていきました。そこで、最終的な着地については「本当に人が死にそうなときの斬り合いはなんでもやるよね」ということでした。死にそうなのに、武道の正しい構えはしないしルールもない、と。
一方で、もちろんゲームとして面白くしたいのは大前提なので、特定の流派にしてしまうと、「この流派はそうじゃないよ」という反応が必ずあるので、特定の流派に絞ることは避けて、それでいて侍としてのリアリティを大事にして、プロの方とも相談しながら作ってきました。
――異様なこだわりを感じます……。宮本武蔵といえば二刀流のイメージを抱く人が多いと思いますが、そういう要素もあるのでしょうか。
二瓶:二刀流は必殺技で使えるようになっていますね。ただ、二刀流にこだわったというよりも、とにかく武蔵らしさにこだわってきました。例えば、環境を使う死に物狂いの戦いが武蔵らしさなので、いろんな武器を使って戦います。
――アクションのほかの新要素としてボス戦で敵をダウンさせてからの攻撃に部位選択があるのも驚きました。
二瓶:選んだ部位のマーカーの色によって効果が変わるシステムになっています。ダメージを多く与える方を選ぶのか、または魂をより多く吸収できる方を選んで必殺技を繰り出すのか、という「鬼武者」らしい駆け引きになっていると思います。ほかにも、敵によっては特定の部位で使っているアクションを封じることもできます。
――「鬼武者」らしい要素といえば、篭手も進化しているのでしょうか?
二瓶:スキルツリーで強化すれば、魂の吸収が攻撃しながらできるようになります。しかし、最初からそれができてしまうと逆に「鬼武者」らしさがなくなるので、途中からアンロックできる形式にしています。
また、背後から魂を吸収するときは背中を貫通しないように、ちゃんと回り込むといった技術的なこだわりもあります。
さらに、シリーズ過去作でも単純に敵を斬りながら進んでいくだけじゃなくて、謎解きもあったと思いますが、今回もそういう要素を取り入れたいと思っていました。そこで、L2とR2の同時押しで篭手を使って見えないものが見えるようになる要素を入れました。これは探索でもバトルでも使えます。
――宮本武蔵が篭手としゃべっているのも印象的でした。篭手をバディ的な存在として描いているのでしょうか。
二瓶:そうですね。今作では宮本武蔵ひとりの物語をしっかりと描きたいというのが前提にあったのでキャラクター交代とかはないんですけど、それだけになってしまうと本当にただただ黙ってアクションをするゲームになってしまいます。会話をするキャラクターを描きたかったので、篭手がしゃべるという試みも新しいと同時に「鬼武者」らしい表現としていい刺激になっていると思います。
――宮本武蔵がイライラして相手を「篭手女」と呼んで怒られる場面は笑いました。トレーラーもちょっとコミカルなタッチが印象的ですね。
二瓶:一般的に、侍のイメージってあまり表情を動かさない描き方が多いじゃないですか。でも、今作ではちゃんと「いやなものはいや」、「面倒くさいものは面倒くさい」と正直に感情を表現するキャラクターを描きたかったんです。ある意味それもカプコンらしさなのかな、とも思います。それがコミカルに感じるところもあると思いますが、あくまでキャラクターをしっかりと描きたかったですね。コミカルを狙ったというよりも、「武蔵らしさはこうだよね」、「こういうふうに言うよね」というところから始まった感じですね。
――フェイスモデルとして三船敏郎さんを起用している理由についてもお聞かせください。
門脇:「鬼武者」を復活させるうえで、少しでも馴染んでもらえる作品にしたかったので、ちょっとでもグローバルで知っているキャラクターということで宮本武蔵がふさわしいと感じていました。同時にそれが二瓶の描きたい侍像ともマッチしていました。
三船さんに関しては、実を言うとカプコンでは昔から「鬼武者」でそれがやりたいというのがあったと聞いています。三船さんの海外での認知も侍スターとして非常に高いので、そういう方のフェイスモデルをアイコンに使ったゲームは興味をもってもらうきっかけにもなると考えました。ただ、三船さんが演技しているのではなく、あくまで三船さんの顔で宮本武蔵を描いている感じですね。
――「鬼武者」は過去にも金城武さんやジャン・レノといった役者のフェイスモデルをいち早く起用していたので、そういう意味ではこのシリーズらしい試みですね。ちなみに、今作ではほかにも有名な役者さんのフェイスモデルを使っていますか。
門脇:著名な方は三船さんだけですね。ただ、ほかのキャラクターもすべて実在する方のフェイスモデルを使っています。
――それはすごい……。
二瓶:小ネタでいうと、日本舞台のゲームで開発者も日本人なので、かなり社員を作っています(笑)。
――へえ……。全部で何人くらいいるんですか?
二瓶:全部で100人くらいになると思います。
――で、そのほとんどが社員と?
二瓶:そうですね(笑)。主役級のキャラクターについては社員じゃない人を使っていますが。
――主役級のキャラクターでいうと、試遊でもボスとして登場した佐々木巌流がめちゃくちゃ魅力的で、女性人気も集まりそうすね。
二瓶:まさに先程も女性のインタビュアーさんにカッコよかったと言っていただきました(笑)。キャスティングするときはたくさんの写真を見て、有名な役者かどうかよりもキャラクターにマッチしているかどうかを見て選びました。佐々木巌流については狂気的なキャラクターを描きたいというのがありました。表情や目の使い方なども見て、こういう狂気的なキャラクターが得意そうな役者は誰なのかというところから選んでいますね。
――狂気的でした! 佐々木巌流といえばボスですが、今作のボスのデザインの方向性についても教えてください。
二瓶:「鬼武者」なので、異様の怪物である幻魔らしい表現を大事にしたかったですね。今回は京都が舞台なので、和風の要素をしっかり入れたいというのがありました。例えば、こわもてのお面を被っている敵なのに和服を着ているなど、人間ではないけど単純な妖怪でもないデザインを意識しています。武蔵の三倍くらい大きい敵も登場したりします。
――そういった巨大な敵の攻撃も受け流し主体で戦えるのでしょうか?
二瓶:ボスによって攻略の仕方が変わるのですが、武器を持っているタイプの敵であればそうですね。
――試遊では清水寺のステージを攻略して最後にボスが待ち構えていましたが、ゲーム全体のフィールド構成について教えてください。
二瓶:ベースとなるのはリニアな構成のステージマップで、お話が進むと次のステージへ移行する形式ですね。ただ、まだ詳しく話せないのですがそれ以外の要素も用意しています。
――清水寺が作り込まれていて、実際に訪れたような気持ちになりました。
二瓶:ありがとうございます! 清水寺に関しては柱の数を現実と同じにするなど、かなりこだわっています。今はなくなったけど昔の清水寺にあった建物を反映するようなこともしています。一方で、当時はまだなかった建物でも、現代人にとってアイコニックなものはあえて残しています。そういうところで史実とエンターテインメントのバランスをとっていますね。ほかにも京都の様々なロケーションを再現していますので、ぜひ楽しみにしてください。
――ステージを攻略しながら、庶民が逃げていくといったリアルタイムな演出にも驚きました。本作はカットシーンに頼るよりも、ストーリーの流れをプレイしながら感じてもらう表現をベースにしているのでしょうか?
二瓶:そうですね。没入感を削ぎたくないので、できるところはリアルタイムで、というのは開発初期からの方針としてありました。もちろんカットシーンもあるにはあって、昔と比べて技術力も上がっているので、めちゃくちゃできることが増えています。リアルタイムとカットシーンをうまく使い分けたストーリーを楽しんでいただけたら幸いです。
――ストーリーもかなり力が入っているのでしょうか。
二瓶:はい! ストーリーが面白くなるように作っていますよ。まだ未公開の主役級のボスもいるので、ぜひ楽しみにしていただきたいです。また、武蔵だけの物語じゃなくて、それを裏切るような展開も待っています。
――それは気になりますね……。それで言うと、宮本武蔵以外の歴史上の人物も登場するのでしょうか?
門脇:そうですね、います! たぶんびっくりしていただけるんじゃないかと思います。
――ありがとうございました!
『鬼武者 Way of the Sword』は2026年、PS5/Xbox Series X/PC向けに発売予定だ。
