『The Blood of Dawnwalker』は吸血鬼の魅力が戦闘や探索に凝縮されたオープンワールドアクションRPG 4時間試遊でわかった“夜だけ”吸血鬼の主人公の強さと孤独
壁走りや瞬間移動など吸血鬼ならではの能力がカギに
この記事は、『The Blood of Dawnwalker』の日本向け試遊イベントでのプレイをもとに執筆したプレビュー記事だ。IGN JAPANでは独占企画「IGN First」の一環としてIGN USによるプレビュー記事も別途掲載しているので、あわせてチェックしてほしい。
人間が吸血鬼に支配されている架空の世界を題材にしたオープンワールドのアクションRPG『The Blood of Dawnwalker』。本作をプレイしていると自分のなかにある善悪の基準が揺らいでいることに気がつく。人間としての尊厳が吸血鬼から傷つけられているように思う一方で、目的達成のために吸血鬼としての自分を受け入れるようになっていくからだ。体力を回復するために動物の血を求めてさまようとき、私は自分が本当に怪物になってしまったような気がした。
本作は『ウィッチャー3 ワイルドハント』や『サイバーパンク2077』の元開発者が2022年に設立した開発スタジオRebel Wolvesのデビュー作だ。パブリッシャーはバンダイナムコエンターテインメント。このプレビュー記事では、本作のPC版を4時間試遊して得たプレイフィールを紹介する。試遊できたのは開発中のバージョンであるため、製品版とは異なる可能性があることに留意してほしい。

非日常的な世界を丹念に描くストーリー
主人公のコーエンは、当初は純粋な人間で、家族の平穏を大切にする青年として登場する。しかし、冒頭で巻き起こる出来事をきっかけに吸血鬼の力に覚醒。以降、昼は人間で夜は吸血鬼となる存在へとコーエンは変化してしまう。そうしたコーエンのような特別な存在は、作中ではタイトルにも冠されている「Dawnwalker」と呼ばれている。試遊ではその言葉には吸血鬼の支配を打ち破る存在になり得るイメージを感じるとともに、人間と吸血鬼の間で孤独に生きる存在としての切なさも含まれているように感じた。
なぜ、夜にコーエンが吸血鬼になるようになったかはわからない。そうした謎を解き明かすのも本作の目的に含まれるが、彼にとって何よりも大切なのが家族だ。本作では吸血鬼の親玉であるブレンシスが、近々自身が王であることを宣言する戴冠式を予定しており、式典でコーエンの家族の血を吸うつもりらしい。コーエンの目的は、戴冠式が行われるまでに家族を救出することだ。本作では、特定の行動を行うことでゲーム内の時間が進むようになっていて、戴冠式が行われるまでの30日間で目標を達成しなければならない。
今回の試遊では、ゲーム冒頭から約4時間をプレイすることができたが、チュートリアルや舞台背景の説明が中心となるプロローグパートでそのうち2時間30分ほどを費やした。本格的なオープンワールドアクションRPGとしてのゲームプレイが始まるのは、このプロローグ後なので、いかに丁寧な導入になっているかがわかるだろう。プロローグでは吸血鬼が人間を支配しているという突飛な世界観を説明するのはもちろんのこと、コーエンの日常生活を重視した描写の数々にも光るものがある。たとえば体調の悪い母親に食事をさせたり、兄弟と一緒に遊んだりといった描写には、吸血鬼による支配という異常な出来事に直面して戸惑いながらも、人々は自分や家族のために以前と変わらない日常生活を営もうとしている様子が伝わってくる。

本作において、吸血鬼は人間を病気から救う者として、教会から称賛を受けている存在だ。14世紀の中世ヨーロッパを題材とした本作の世界では黒死病の流行で人間は苦しんでいるのだが、人間が吸血鬼の血を飲むと病気にかからないというメリットを信じ、教会は吸血鬼を救世主のように考えているようだ。たとえば吸血鬼が教会のミサに定期的に訪れることを教会はすばらしいことだと考えており、来訪を歓迎する。
教会が吸血鬼を崇めているからといって、その他大勢も吸血鬼を称賛しているわけではない。人間からしてみれば吸血鬼は気味の悪い存在であるし、人間よりも力に勝る種族が存在すること自体に嫌悪感を覚える者もいる。吸血鬼の意に従わなければ殺されてしまうかもしれないため、実際のところは吸血鬼の支配を受け入れざるを得ないといった状況だ。自分にとって都合の悪い情報を無視したり過小評価したりしてしまう正常性バイアスに教会が陥っているような気さえしてくるが、宗教と結びつくことで権威付けをした吸血鬼の支配の巧みさがあらわれているのかもしれない。


このため、仮初めともいえる平穏が打ち砕かれ、コーエンが吸血鬼を打倒する決意を固めていく流れには大きな共感が伴った。コーエンは人間という種を救う大義名分ではなく、吸血鬼に囚われた家族を救い出すために戦うのだ。
昼と夜の立場によって善悪の基準が揺らぐキャラクター
コーエンは、人間と吸血鬼を行き来する存在だが、以下のようにそれぞれでできることが異なるのが本作のユニークな点だ。
- 人間
フィールドで走るよりも早く移動できるものやバトルで相手の動きを妨害するといった魔術を使用可能。バトルで使用する武器は剣。人間の姿でいられるのは昼のみで、夜は人間として行動することはできない - 吸血鬼
相手の血を吸うことで体力を回復することができる。吸血鬼ならではの術はバトルに関するものだけでなく、視界内の短距離をワープするものや重力に反して壁を歩く移動に特化したものも使用可能。バトルで使用する武器は剣と爪。夜は吸血鬼としての衝動に抗えない可能性が存在し、道中で出会う人間に危害を与えるおそれがある
コーエンの心情を慮ると、プロローグの出来事によって吸血鬼に憎しみが募る一方で、自分が仇敵と同じ存在になってしまうのは受け入れがたいことだ。時間帯によって種族が変わるコーエンは特別な存在であると同時に、誰より孤独な存在でもある。コーエンにしても吸血鬼になどなりたくもないが、吸血衝動からは逃れられない。たとえば、夜に出会うNPCに対しては、プレイヤーの選択を問わずに吸血行動に走ってしまう場面が存在した。傷つけるつもりはなかったのに相手を傷つけてしまったことには驚いたし、そうならないようにすればよかったと自分を責めるような気持ちにさせられたものだ。コーエンはもはや純粋な人間とはいえず、夜は自身さえも完全に信じることはできないことがやるせない。
時間経過のある一般的なオープンワールドのアクションRPGは時間が自動的に過ぎ去っていくが、本作はプレイヤーの選択によって作中の時間が進むようになっている。昼と夜の時間帯はそれぞれ8つのセグメントに分けられており、クエストの選択肢などで表示される砂時計のアイコンの数字を消費することで作中の時系列を進めていく。プロローグ後の試遊時間は約1時間30分だったが、家族を救う30日間の期限のうち第2日目を終えようとする程度だった。
プレイヤーの任意のタイミングで時間を進めることができるため、30日間という期限に追いかけられている感じはない。むしろどのようなことに時間を費やすかといったプレイヤーの選択が求められているように感じた。家族を救うためにほかのことに考慮せずに邁進するのか、あるいは道中の人間を傷つけないように細心の注意を払うのかといった違いがプレイヤーの考え方によって変わってくる。昼または夜にしかできないことや行けないところが存在するため、時間の進め方自体が問われる。
昼は吸血鬼と戦う人間として暮らしていても、夜は人間の敵である吸血鬼になってしまうところにいたたまれない気持ちにさせられた。しかし、コーエンの家族を救いたいという願いを叶えるためには、ときには忌むべき吸血鬼の力も使わなければならない。吸血鬼は人間よりも戦闘能力が高く、移動手段も豊富。そして、動物や人間の血を飲むことで体力を回復することができる。
吸血鬼の本能に抗えないときはあるものの、基本的にはプレイヤーがどのように振る舞うのかを決めることができる。意図しない吸血行動を避けたければ夜は極力NPCに近寄らなければいいし、動物や人間を襲わなければいい。しかしながら、昼と夜で異なる2つの立場をもつ主人公でプレイすることで、プレイヤーの倫理観も変化していくような感覚がある。たとえば、試遊では吸血鬼の親玉であるブレンシスと戦う場面が存在したが、そのときは完膚なきまでに叩きのめされてしまった。いわゆる負けイベントのようなバトルだったが、人間と吸血鬼の戦闘力の違いが如実にわかる場面だった。
吸血鬼は人間よりも高い戦闘力を持っているため、吸血鬼の打倒を果たすためにはなりふりかまってはいられない。なにより家族を救うためには、吸血鬼の力すらも有効に活用できなければ勝利することは難しいだろう。私も当初は吸血鬼の力を忌避していたが、宿敵を倒すための免罪符とでもいうかのように吸血鬼の力を使うことに躊躇しなくなっていった。体力回復のために、フィールドで動物を探すようになった自分の心境の変化はまるで本当に怪物になってしまったかのようだった。

先述したとおり、本作の世界設定は現実の14世紀ヨーロッパと接続している部分がある。たとえば、コーエンが知り合いの薬学者にラテン語を学ぶ場面が登場するのだが、そのときに使われていた書物が、実在する古代ローマの哲学書だったり詩集だったりした。古代ローマの詩人カトゥルスが恋人レスビアに贈った詩が登場し、コーエンの知らない「basiatio」というラテン語を前後の文脈から「キスをする」と推察するというやり取りもあった。この場面でコーエンは古代ローマの教養を学ぶ素直で真面目な学生のように思える。


吸血鬼の能力を活かしたフィールド探索が可能なオープンワールド
30日間の昼と夜で家族を救うという大きな目標は存在するものの、目標達成までにどのように進めていくかはプレイヤーが決めていく。プロローグ終了後はコーエンの暮らしていた村の外の世界へアクセスできるようになり、それまでにいた村からすると広大なフィールドが広がる。メインストーリー上での目標としては、コーエンと交流のあるキャラクターと某所で落ち合う約束をするものの、そこに至るまでに何をするのもプレイヤーの自由だ。
落ち合う約束をしたNPCは、コーエンにラテン語を教えてくれたアンカだ。彼女は世の中の事情に明るいため、吸血鬼を倒すために頼りになるだろう。しかし、プロローグ後のスタート地点と約束した場所は距離的にかなり離れている。一般的なアクションRPGの場合はクエストをクリアしていくことで目標に至るまでの道のりを進めていけるようになっているが、本作は目的地は教えてくれるものの、その道のりはプレイヤーが決めろといった体裁だ。それはまるで野原に置き去りにされたかのような感覚で、どのようなことから始めればいいのか戸惑ってしまった。
無論、ストーリーの目標を達成するためにどのように進むべきかはプレイヤーに委ねられているものの、単に広大なフィールドにプレイヤーを放り出したというわけではない。マップを開けば辺りにどのような施設があるのかを教えてくれるし、イベントが発生する可能性のある場所については「?」マークが記載されている。施設は数種類が存在するが、アビリティの習得やファストトラベルの拠点となる祠は優先して訪れるべき場所になるだろう。アクセス可能な祠を増やすために、私は行ったことのない場所を探索してファストトラベル可能な拠点を徐々に増やしていった。
逆に一直線に目的地に行ってしまうことも考えられるが、こちらはあまり現実的ではない。広大なフィールドでは敵と遭遇することが頻繁にあるし、レベル制の本作では主人公を強化しなくては苦戦する強敵と出くわすおそれがあるからだ。新たなアビリティの習得は祠でしかできないようになっているため、目標達成にはある程度の探索が必要となってくるだろう。開発チームによると、プロローグ終了時点で製品版の約4分の1から5分の1に相当するらしいフィールドが今回の試遊でアクセス可能だったそうだが、4時間の試遊では目的地にたどり着くことができなかった。
また、プレイヤーが作中の時間を進めるという観点から、探索においても選択の重さが表現されていると感じた。フィールドのイベントを進めるのに作中の時間を進める必要が出てくる場面があるので、すべてを発見済みにするというよりもプレイヤーが選択して進めていくところに本作の独自性がある。作中で時間が経過するときは、砂時計のマークが表示されるので視覚的にわかりやすい。フィールドの空白を埋め尽くすのではなく、どこを重点的に調べるのかを考えるプレイフィールはオープンワールドのタイトルのなかでも特徴的だ。


吸血鬼としての能力が、探索においても重要となってくるのが本作の特徴といえるかもしれない。昼と夜のどちらかでしかイベントが発生しない場所が存在し、高い場所から周辺を調べられる塔には吸血鬼のときしか登ることができない。吸血鬼のときにしか使うことのできない壁を走る能力や見える範囲でワープできる能力が必要となってくるからだ。高いところから遠くを見渡すアクティビティは「アサシン クリード」シリーズなどでお馴染みの要素だが、主人公が吸血鬼であることを活かした能力と組み合わせているところが理にかなっている。


方向指定による防御や吸血で体力回復などバリエーション豊かなバトル
本作のバトルは開発スタジオであるRebel Wolvesが「方向指定型戦闘方式」と呼んでおり、攻撃の方向や防御の方向を指定することが大きな特徴となっている。たとえば、防御するときはガードしながら矢印で表示される防御するべき方向を入力する。従来のタイトルのように方向を指定しなくても防御自体はできるが、その場合はこちらのスタミナが尽きると防御することができなくなってしまう。防御するタイミングが合っていて、なおかつ防御する方向が正しければスタミナを消費せずに相手に反撃する隙を作り出すことができる。ただし、防御する方向が間違っていたり、防御するタイミングが合っていないと相手の攻撃を喰らってしまう。スタミナ消費を抑えられることや反撃のきっかけを生むという点では方向指定はメリットがあるが、その反面リスクを負うバトルシステムとなっている。
攻撃においては防御のように矢印が表示されることはなく、攻撃する方向をプレイヤーが決める。たとえば上から斬りつけたり、下から切り上げるといったような形だ。同じ方向から攻撃し続けていると相手もそれに対応するようになり、防御されて相手の体力を減らすことができない。試遊をプレイした限りでは、攻撃する方向を相手に読まれないようにするというよりは一辺倒にならないように注意するという感じだった。方向指定をしない攻撃も可能だが、方向指定した場合と比べて相手に防御されやすくなってしまうため、攻撃にしても防御にしても方向指定を駆使して戦うことが前提となっている。
バトルの成否は、防御を上手くできるかどうかにかかっている。防御の入力方向を間違えると相手から一撃喰らうことになってしまい、それが続くとこちらの体力が尽きてしまうからだ。それを避けるために、本作では大抵はまず相手をロックオンして防御のタイミングを図ることになるだろう。試遊して気になったのは、序盤から複数の敵を相手にする機会が多かったことだ。複数の相手から続けざまに攻撃されることが多く、防御最優先で待ちに徹していると、こちらからバトルの主導権を握ることができない。
防御から攻撃へ転じるきっかけになるのは、方向を指定した防御の成功だ。方向を指定して防御に成功するとほんの一瞬だけスローモーションになり、乾いた音が鳴り響く。その演出が爽快に感じられることと方向指定で得られるスタミナ温存のメリットによって、反撃が心地いい。ただ、率直に言って、本作のバトルは一般的なオープンワールドのRPGと比べると難しい。実際に試遊では相手に負けてしまうこともあった。しかし、敗れてしまった直前のところから再挑戦できるのでやり直しは苦にならなかった。
本作は『ウィッチャー3 ワイルドハント』の元開発者らも携わっており、剣と魔法的なものを組み合わせたバトルは同作を思い起こさせる部分もある。しかし、この方向指定のシステムによって、本作のバトルはかなり忙しい印象を受ける。攻撃や防御の方向を指定するバトルと言えば「Kingdom Come: Deliverance」シリーズがあるが、あちらに魔術や吸血術が加わったと考えるとその忙しさが想像しやすいかもしれない。とはいえ、設定で難易度を下げることはもちろん、方向指定をオフにすることも可能となっている。

吸血鬼のときは人間よりも高い戦闘力があり、剣に加えて爪でも相手を攻撃することが可能。バトル中に相手の血を吸って体力を回復することもできるため、吸血鬼は継戦能力も優れている。吸血のアビリティはバトル中だけでなく、先制攻撃としても使用できることが大きな特徴。本作は探索とバトルがシームレスとなっているが、フィールドで発見した相手に吸血で攻撃することで一撃入れてからバトルに移行することが可能だ。
コーエンが他者の血を吸っているときは専用のゲージによって、回復できる体力の量や相手を死に至らしめるまでの時間がおおよそわかるようになっている。血を吸っているときはこちらが無防備となるため、相手が複数の場合は血を吸っている敵の仲間から反撃を喰らいやすい。血を吸っている時間の長さによっては相手の体力をより減らし、場合によってはそのまま殺すこともできるが短時間で実現するものでもない。試遊した限りでは体力を大きく回復したり、敵をそのまま殺すほどの吸血はかなりの時間が必要だった。本作にはスキルツリーもあって、眺めてみたところ吸血による回復量の向上も可能なようだったため、どのようにビルドを組むかでも有用な戦い方が変わってきそうだ。

『ウィッチャー3 ワイルドハント』を愛好する私にとって、同作の元開発者が手がける『The Blood of Dawnwalker』はずっと注目していたタイトルだった。吸血鬼というポピュラーな題材を取り扱いながらも、試遊では家族を救う目的のために人間と怪物の間で揺れ動く主人公の孤独を垣間見ることができた。攻撃と防御の方向を指定する本作のバトルシステムは当初はとっつきにくさを感じたが、成功したときのメリットの大きさは試したくなる気持ちにさせる。方向指定の防御に成功したときは一瞬だけスローモーションになり、相手の攻撃を弾いた音が鳴り響く。メリットの大きさと成功時の演出が洗練されているため、試遊を続けるうちに方向指定のバトルに慣れ親しみたいという意欲が湧いてきた。ストーリーにおいても、バトルにおいても独自の魅力が存在する『The Blood of Dawnwalker』は、2026年発売のRPGとして注目すべきタイトルのひとつといえるだろう。
『The Blood of Dawnwalker』は、2026年9月3日にPC(Steam)/PS5/Xbox Series X|S向けに発売予定。関連リンクは以下のとおり。
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