『Forza Horizon 6』日本の四季はここまで再現される――膨大な作業量でめざした“日本らしさ”、開発陣が語るプレイ体験へのこだわり
ふたたび季節の移り変わりが導入されたことで、ビジュアルやプレイ体験にどんな変化が生まれたか
『Forza Horizon 4』で季節の変化を取り入れたことは、シリーズにとって大きなシフトチェンジだった。ブリテン島の美しい四季を再現することは、マップを4つ作るのに近い、相当な大事業だったことは想像に難くない。しかし、そうした努力の成果として生まれたのが、毎週プレイしたくなるような素晴らしく美しい変化の数々だった。週ごとに少しずつ景色の細部が移り変わっていくことで、『Forza Horizon 4』は常に新鮮な気持ちでプレイできる作品になっていた。
『Forza Horizon 5』で描かれたメキシコの季節の移り変わりは、ブリテン島の四季と比べるとやや控えめで、季節の変化は景色の違いというよりも、天候の違いによって感じられる部分が大きかった。しかしシリーズ最新作となる『Forza Horizon 6』では劇的な四季の移ろいが復活し、季節が変わることで周囲の景色も一変する。見ているだけで震えが来そうな豪雪の冬が過ぎゆき、どこを切り取ってもまるで一葉の絵葉書のように美しい春が訪れるのだ。
「多くの人が“日本らしさ”についてそれぞれの考えを持っていますが、そこにはたいてい季節の移ろいが関わってきます」と語るのは、本作のアートディレクターを務めるドン・アーセタ。「事前の調査やプリプロダクションで日本を訪れた際にも、季節の影響はかなり大きいと感じました。だからこそ、それをきちんと作品に取り入れたかったんです」
「季節が移りゆくなかで生じる変化は劇的で美しい。そうした美しさをしっかりと捉えて、作中で再現したいと考えました。結果的に、これまでのゲームには見られないほどの大胆ではっきりとした季節の変化を実現できました」
「おもしろいのは、こうした点が私たち開発者にとっては好機であると同時に挑むべき難題でもあったということです」と、プロダクションディレクターのマイク・ベネットはつけ加える。「ビジュアルの観点から言えば、一目でわかる大幅な変化を加えるのはチャンスとなります。同じ場所でプレイしても、先週体験したものとはがらりと変わった違う景色を楽しめるわけですから」
「でも、過去作で学んだ教訓を念頭におけば大きな挑戦でもあります。『Forza Horizon 4』では、季節に関してプレイヤーの皆さんの好評を得られない場合もありました。それが特に顕著なのが、冬だったんです」
季節に関してプレイヤーの好評を得られない場合もありました。特に顕著なのが、冬だったんです
ベネットによれば、『Forza Horizon 4』の冬は作中のほかの季節のようなビジュアル面での変化があるだけではなく、ハンドリング特性への影響が大きかったのだという。
「『4』では、路面を雪と氷で覆うことにしました。『3』の『Blizzard Mountain』で楽しめた要素に近い部分もあったと思います」とベネットは言う。「確かに最初のうちはとても楽しいんですが、冬の間ずっとすべての道路が雪に覆われていると、プレイヤーの皆さんは徐々に飽きてきてしまうようでした」
「そうした過去の教訓を踏まえて、真に迫った日本らしさを表現する方法を模索しました。私たちの作る日本では、冬は基本的に雪に覆われた景観になりますが、それを再現しつつ、主にアスファルトを走りたいプレイヤーにも不満を抱かせないようにするにはどうすればいいか、と考えたのです。最終的にかなりバランスの取れた折衷案にたどり着くことができたと思います。参考資料からわかったのは、日本は除雪も含めて、道路の清掃がかなり行き届いているということでした。だから、作中の舗装された路面は、冬でも基本的にきれいで走りやすい状態です。でも、舗装道路を外れて砂利道やダートの道に進むと、そちらにはより多くの雪を残すようにしています」
「もっとワイルドにオフロードを楽しみたいという人は、冬ならではの雪道も楽しめるというわけです。しかも、本作では高山帯もマップ範囲に含まれているので、そこに行けば一年中雪を楽しむこともできます。そういったエリアに向かえば、季節を問わずに『Blizzard Mountain』のようなゲームプレイを楽しめるんです。最高でしょう? 標高の高い地域では、スノータイヤを装着したオフロード車で雪に覆われた路面を満喫してください。そういうドライブ体験を求めている方は、標高の高い山を目指せば季節に関係なく楽しめます。逆に、冬だからといって雪道ばかりを走りたくないという方は、舗装された雪のない路面を楽しめます」
ベネット曰く、必ずしも4週間ごとにプレイヤー数が減少していたわけではないものの、単にスリップが多発する冬に飽きてしまうプレイヤーが多いことへの対策としてこうなったそうだ。
「プレイヤー数などのデータにそうした(減少の)傾向が明確に出ていたかと言われれば微妙なんですが、コミュニティチームが集めたフィードバックやファンのコメントを見ていると、そういう意見が多かったのは確かです」とベネット。「やはり疲れてしまうんでしょうね」
「もちろん、冬が好きな人はいます。(気候が温暖なメキシコに舞台を移した)『5』では逆に、雪がないことを残念に思う人もいました。実際、雪は存在していましたが、火山の頂上付近に限定されていました。というのも、私たちは舞台にした土地のリアルな環境を重視していたからです。今作では舞台が日本に移ったことで、どちらのプレイヤーにとっても楽しめるゲームプレイ、満足できる体験を実現できたと思います」
開発元のPlayground Gamesによれば、本作で描かれる日本の四季には、多くのプレイヤーがすぐには気づかないような細部のこだわりが詰まっているという。もちろん、ススキの生い茂る平原や、日本の典型的な春の彩りである満開の桜の花などを見落とすことはあまりないだろう。だが『Forza Horizon 6』には、より繊細で細やかな変化がたくさん盛り込まれている。
「たとえば蛍が飛び交うのは当然ながら夏だけですし、マップのなかでも一部の限られたエリアだけなんです」とアーセタは語る。「だから、常に見かけるわけではなく、なにかの拍子に偶然出くわすことになります」
「季節に関するほかの要素を挙げるとすれば、寺社の近くにある池に美しい鯉が泳いでいることですね。特定の季節にはそれらを見ることができ、観察することもできるのですが、そうした点も魅力的な演出のひとつです。車でぶつかるようなことはできませんが、池の近くに行くと逃げ出すなど、鯉の挙動にもこだわっていますよ」
また、気温の低い環境では自動車の排気ガスも目に見えるようになる。排気ガスに含まれる水蒸気が、冷たい外気に触れることで凝結するからだ。
「私たちがぜひ表現したかったことのひとつは、車を生きて呼吸する機械として扱うことでした」と、アーセタはチームの思いを語ってくれた。「そうしたこだわりの一環として取り入れたのが、とても寒い環境では水蒸気が凝結するという要素です」
「私自身カナダで育ったので、排気口から蒸気がどっと噴き出す光景は見慣れていました。自動車が作中のその場所に生き生きと存在しているマシンだということを示すために、そうした光景を取り入れたかったんです。高山帯や冬の時期に見られるのはもちろん、秋や春でも冷え込む時間帯にはちゃんとこうした現象が発生します」
私たちがぜひ表現したかったことのひとつは、車を生きて呼吸する機械として扱うことでした
『Forza Horizon 6』で描かれる日本の季節の描写としてはほかに、人間の要素も挙げられる。Playgroundは、日本の伝統的な「祭り」をも本作に取り入れているのだ。
「この点については、カルチュラルコンサルタントのアドバイスが参考になりました。ひとつひとつの光景に込められた意味や意図を理解するための大きな助けになったと思います」とベネット。
アーセタは「日本には地元の祭りが本当にたくさんありますから」と述べ、次のように語った。「すべてを作品に取り入れることはできませんが、日本の方だけでなく、世界中の人とっても象徴的だと感じられるようなものを選びました」
「だから、春になればこどもの日を祝う鯉のぼりが見られますし、秋にはたくさんの紙灯篭が空や川に浮かびます。夏には凧揚げ祭りも行われるので、空高く凧を揚げる人たちの姿も見られますよ」
もちろん、季節によって変わるのはビジュアルだけではない。レーシングそのものへの影響も大きいが、Playgroundとしては、特定のイベントへ挑むために有利・不利な季節が生じることは望んでいなかったそうだ。
「農村部に行くなら、季節による変化が一番目立つのは稲を育てる田んぼでしょうね」とベネットは言う。「冬場の田んぼは凍って固くなっていますし、夏から秋にかけては水が張られています」
「オフロード車に乗って田んぼを走る場合、季節によって感覚はまったく異なります。そのため、農村部でオフロードやクロスカントリーのイベントに参加する場合、季節の影響はどうしても大きくなります」
「この点については、もちろん開発チームでもきちんと考慮しました。イベントを設計するにあたっては、できるだけ幅広く楽しめるものにしたいと考えていたので、季節によって体験に差は出たとしても、特定の季節でプレイすると不利になるようなことは可能な限り避けたいと思っていました。純粋に、体験や感覚の違いが出るだけにしたかったんです。その点は、本作全体に通底する考えです」
季節ごとに見た目が劇的に変化する環境をふたたび取り入れたことで、Playgroundの開発チーム内部にも活気が生まれたという。
「現実世界の日本には、四季どころか七十二候と呼ばれる繊細な季節の変化が存在します。植生や野生動物など、多岐にわたる細やかな変化を大きく4つの季節に分けてゲーム内に取り入れるのはやりがいのある仕事でした」と、アーセタ。「その季節のそのロケーションで、一番美しいバージョンを切り取るんです。季節ごとに驚くほど多くの変化が見られますよ」
「1つだけ選ぶのは難しいですね。春はもちろん象徴的な桜がありますが、やはり秋でしょうか。色彩あふれる秋という季節は、もともと個人的にも大好きな季節なんです。またこの季節には、雲海と呼ばれる本作独自の気象表現もあります」
四季を再現するということは、チームにとっては開発の作業量が増加するだけではなく、実際にプレイしてテストするために必要な時間が4倍になるということでもある。だが、その甲斐はあったようだ。
「もちろん、作業量は多くなりました。その大部分は、ドンをはじめとしたビジュアル担当のチームが担うことになったと言っていいでしょう」と、ベネット。「ゲーム世界のビジュアルに一貫性を持たせ、どれかひとつの季節だけが人気になってしまうような偏りが生じないように細心の注意が必要でしたから」
「ちょっと単純化しすぎではあるでしょうが、『Forza Horizon 3』での作業と比較すれば想像しやすいでしょう。きわめて鮮烈ではあっても色彩は1種類だけで、季節の変化もない世界ですが、もちろんじっくりと腰を据えてゲームをテストし、細部まで確認する必要があります。本作では、その腰を据えて細部まで確認する作業を、4回繰り返したようなものです」
「レンダリングの最適化という観点から言っても、ゲーム世界に季節の変化を取り入れれば、きちんと動作させるためにやるべきことは一気に増大します」
「でも、プレイヤーにとっては常に新鮮な気持ちで楽しめるし、季節限定のイベントを取り入れることもできる。毎週ゲームに戻ってきてもらうための施策としてはかなり有効なんです。大変な作業ではありますが、苦労する価値のある要素だったと思います」
『Forza Horizon 6』は、2026年5月19日にXbox Series X|S/PC(Microsoft Store/Steam)向けに発売予定。発売初日からGame Passを通じてプレイが可能だ。PS5版も2026年後半の発売が予定されている。
本作については以下の特集記事も掲載しているので、あわせてチェックしてみよう。