🔭長期視点で考えるObsidian活用術
「Obsidianに興味があるけどよくわからない人」に向けての基礎以前から始める連載
🦇こんにちは、はるなです。
今回から、ごりゅごさんの新連載スタートです。
ナレッジスタックではマニアックなObsidianの使い方を紹介することが多い印象なのですが、今回の連載は「Obsidianに興味があるけどよくわからない人」に向けて、Obsidianとはどういうツールで、なにがよいのか。既存のノートアプリなどとなにが違うのか。どんなことに使ったら便利なのか。
そんなことをまとめる連載です。
Obsidianちょっと気になるな。Obsidianをインストールしたけれど、全然使ってないな。Obsidian使いはじめたけど、何に使うといいのかな?というような人におすすめです。
「ずっと続くソフト」は存在しない
こういうときは、まずObsidianとはどんなツールなのか、という話から始めるのが一般的ですが、今回はもう少し風呂敷を広げて、まずは「デジタルノート」を使う上で一番大事なことを理解していただくために、私のデジタルノートの思い出を語らせてください。
現在(2025年)から考えると、もう15年くらい前のことでしょうか。
当時の私は「Evernote」というデジタルノートにベタボレをし、このツールと共に人生を刻んでいくんだ、という心意気でEvernoteに向き合っていました。
最初の数年は、それはもう楽しいことしかないような日々でした。付き合いたてのカップルのように「熱に浮かされていた」というのもあったんだと思います。
当時はスマートフォンが世間に広がっていくタイミングとも重なり「新しいライフスタイル」が定着しつつあった時期でした。スマートフォンとPCのデータをクラウドで同期できる便利なノート、といった利点を軸に、非常に多くの人がEvernoteに夢を見ていたように思います。
ただし夢というのは現実には起こらないから夢だと言われるわけです。夢と希望にあふれていたEvernoteも、時間と共に少しずつ「現実的なもの」に形を変えていきます。
特に影響が大きかったのは、フリーミアム(基本無料で使えつつ、より多くの機能が欲しい人にお金を払ってもらう)を事実上終了させて、有料課金者しか「使えない」ソフトに変わったことでしょう。(このおかげで、事業としてはものすごく安定する = 儲かるようになったという話を聞いた)
こうやって「儲かる」ようになったEvernoteは、結局創業者がEvernoteから去ることで事実上完全に「別の会社」になってしまいました。私にとってのEvernoteは「青春の日々」ではあったんですが「もはや二度と戻ることがない思い出」になってしまったとも言えます。
これは、誰が悪いという話ではありません。資本主義の社会でなんらかの製品・サービスが提供される限り、どんな会社にも必ず起こり得る出来事です。
会社は、お金がないと続かない。
スタートアップなどは「儲からない状態」を「投資してもらう」ことでどうにかしのいでいますが、必ずどこかで誰かがお金を支払っている人がいて、そのお金があるからサービスが続いている。
Evernoteの場合、データをクラウドに保管することが前提のサービスでした。そうであるがために、無料ユーザーが増えれば増えるほどコストがかさむ設計だった、というのも経営的な課題として大きかったのだと思います。
なので結局は事実上「無料ユーザーを排除する」ことでしか生き残ることができなかった。
Evernoteから学ぶ「デジタルノートとの付き合い方」
と、まあここまではあくまでもビジネス的な観点での分析。
そういうめんどくさい話はここまでにして、次はユーザーとしての観点でEvernoteから学ぶ「デジタルノートとの付き合い方」について考えてみましょう。
まず、大前提として、どんな素晴らしいソフトウェアやサービスも、永久に安定して使い続けられるなんてことはありえません。これはもう現代社会の仕組みが根本的にひっくり返ったとしても、人類が人類である限り避けられない問題です。
今回のメイントピックである「Obsidian」についても、できる限りサービスが長く続いて欲しいと思っているし、長く続いて欲しいからこうやって記事を書いているわけですが、それでもいつまでも永久に開発が続くなんていう保証は一切ありません。
いつまで続くかは誰も保証できない。これだけはもうどんなサービスにも「絶対」に言えることです。
その前提を踏まえると、Obsidianというデジタルノートを勧める理由というのもハッキリします。
簡単に言うと、Obsidianは「長く続く可能性が高い設計」であることと「なくなったとしてもダメージが少ない設計」のツールだからです。
すべてのノートを「自分で管理」する
まず最初は、Obsidianが「長く続く可能性が高い設計」であるという話から。
Obsidianの特徴のひとつは、すべてのノートを「自分のコンピューターで管理する」ことが前提となっているサービスです。
簡単に言うと「ノートを同期する機能」みたいなのはObsidianにはついておらず、複数の端末でノートを同期するには自分で頑張ってどうにかするしかない。
代表的な同期方法が、AppleのiCloudを使うか、Obsidianが有料で提供する「Obsidian Sync」というサービスを使うこと。
つまり、Obsidianというソフトの開発を続けていく上で、いわゆる「サーバー代」ということを基本的に気にしなくてもいい。
もちろん、ソフトのダウンロード用のサーバーなどは必要なので、こうした費用が完全にゼロになることはないんですが、それでもデータをクラウドで同期することが前提になっているEvernoteやNotionなどのサービスと比べると、維持費が非常に少なくて済むということは容易に想像ができます。
さらにもうちょっと穿った見方をすれば、Obsidianを使う人というのは基本的に「自分で同期方法なんかを考える人」がメインユーザーになってくるので、むやみやたらにユーザー数が増え過ぎず「有名税」がかからない、なんてことも言えるかもしれません。
これはあくまでも私なりの予測なんですが、Obsidianはできるだけ「大きくなり過ぎない」ことを意識してソフトの開発やサービスの設計が行われているように感じます。
なので、可能性として大手資本に買収される可能性はあまり大きくないし、できるだけ多くのユーザーを獲得しなければいけないなんてこともない。
今のレベルで十分サービスを維持できていて、社会情勢の変化などの「他者からの影響」を受ける可能性が低い。
そういう意味で「長く続く可能性が高いサービス」なのだと感じています。
「なくなってもダメージが少ない」
とは言え、ここまでの話は所詮「予測」であり「可能性」の話でしかありません。
どれだけ長く続く可能性が高いとは言え、サービスがなくなる可能性はゼロにはなりません。
その時に重要なのが、これまでに自分が作ったノートはどうなるのか、という話です。
その対策として考えられているのが、Obsidianが「マークダウン」という、コンピューターの世界でもはや標準と言えるような普遍的なノートの形式を採用している、ということです。
今回はマークダウンについて詳しい話はしませんが、ものすごく雑な言い方をすれば「コンピュータという仕組みが残り続ける限りマークダウンファイルの中身は読める」くらいのことが言えるレベルです。
たとえばEvernoteやNotionも、仕組みとして「データを書き出す」ことはできるようになっています。
ただそれは「できる」からといって「簡単」かどうか「便利」かどうか、というのとは別の話。書き出したデータは大抵の場合何らかの処理が必要です。
(たとえば現在は、EvernoteのデータをNotionに取り込むサービス、といったものは複数あるが、それもどうしても「誰かに頼る」ので、自由に簡単にできるというわけではない)
また、たとえばNotionのサーバに障害が発生すると、その時間はNotionを使うことができない。サービスが使えるかどうかというのも他者に依存する部分が大きくなるのです。
もちろんそれは可能性としてはゼロに近いレベルですが、Googleのサービスが止まってGmailが一定時間使えなかった、ということはこれまでにも現実に起こっています。
Obsidianは「パソコンが壊れた」なんて場合などに備えて、自分で対策が必要です。ただ、その場合の相手というのはGoogleやNotionといった目に見えない巨大な相手ではなく、自分の手元に近い「手触りのある存在」です。
このあたりも「他者からの影響」というよりは「自分の手が届く範囲で何とかする」という感覚で課題に向き合うことができます。
結局のところ、Obsidianを使う場合「自分で作ったノート」は、自分の責任で、自分がきちんと管理する。これは「自由」ですが、同時に自分自身の「責任」が伴うことでもある、というわけです。
EvernoteやNotionと違って、バックアップがない状態でパソコンが壊れたら、データが戻ってこない可能性が高くなります。自分の責任でデータのバックアップができないと感じる人は使うべきではありません。
が、同時にたとえば「Dropbox使っとけばいいんでしょ」「One Driveでいいよね」「Gitでデータ管理しといたらいいかな」みたいなことは、すべて自分の意志で自由に選択ができる。
心配性な方はローカルとクラウドを使ってバックアップを何重にもしておくことができるし、機密性が高い情報を扱いたいから「クラウドとは同期しない」ということを自分自身の意志で選択することも可能。
「他者からの影響を受けにくい」「できる範囲のことは自分でやる」そんなところが、これまで言われていたObsidianのメリットであり、特徴でもある、ということができるでしょう。
次回:生成AI時代のツールでもある
そしてさらに、Obsidianの新しいもうひとつメリットとして「生成AIと非常に相性がいい」という特徴が新しく登場しました。
これに関しては、また次回詳しく掘り下げていきましょう。
ということで今日は「デジタルノートに絶対はないけど、続けられる設計にコツはある」というお話でした。
👠編集後記:
毎月1本、お互いのニュースレターへ寄稿し合っています。私の書いたObsidianの記事も「✉️ナレッジスタック」で配信されているので、よかったらそちらも読んでみてください。現在は毎月1本「生成AIと考える技術」という新しいシリーズで書いています。
ちなみに私、はるなも2020年からObsidianを使いはじめて丸5年が経ちました。ただ、ごりゅごさんとは使い方も用途も結構違います。それくらいObsidianは自由度が高いノートツールなんです。
私はどちらかというと、毎日の簡易な日報+原稿管理の使い方がメイン。一方でごりゅごさんは、思考の整理や情報の再構築のためにObsidianを使っている印象があります。
「自分に合ったノートの使い方」を自由に構築できるのがObsidianの魅力のひとつです。ただ、自由すぎるがゆえに何から手をつけていいのか、逆に迷いが発生してしまうことも事実です。
今後の連載では、初心者の方にもわかりやすく、「Obsidianってなんで人気なの?」「どう使えばいいの?」という問いに答えてもらえるものになるのではないかと考えています。





