父の高校時代のアメフトの試合を、映像で見たい。David Stein氏のプロジェクトは、その思いから始まった。祖父がスーパー8フィルムで撮った映像や、学校が寄贈した16mmフィルムが手がかりだった。だが父の試合のすべてが残っているわけではなく、学校の倉庫で見つかった古いフィルムは、酢のような臭いを放つ劣化(ビネガーシンドローム)が進み、朽ちかけていた。
専門業者に頼むと、デジタル化は1本200ドル(約3万2000円)。すべてを救うには費用がかさみすぎる。そこでStein氏は、自分でフィルムスキャナーを作ることにした。
中心に据えたのは、1928年製のフィルム映写機だ。古い映写機は、もろくなったフィルムを破かずにゆっくり送る役目を担う。これを改造して動きを精密にし、Raspberry Piのカメラと連携できるようにした。頭脳はRaspberry Pi 5で、高画質カメラと顕微鏡用のレンズをフィルムの通り道に向けている。
最初の版はRaspberry Pi 4で組み、1コマずつ撮影していた。1万6000コマあるリール1本に18時間以上かかっていたという。Raspberry Pi 5に載せ替えると、フィルムを止めずに流し続けられるようになり、所要時間は約4時間に縮んだ。フィルムの送りはArduinoと2つのモータードライバーが受け持ち、毎秒8コマで動かす。急な動き出しでフィルムを傷めないよう、10秒かけてゆっくり加速する。カメラは毎秒30フレームで60秒ずつ録画し、5ミリ秒の短い露光で1コマずつを止めて写す。あとはオープンソースの動画処理ソフトFFmpegとPythonの処理で、各コマから最も鮮明な1枚を選び出す。
映像に写る選手たちは、いまや70代だ。Stein氏は、この映像のなかで彼らは数分だけ17歳に戻る、と語る。手元の小さなコンピューターと古い機械を組み合わせれば、業者任せでは消えていく記憶も、自分の手で残せる。フィルムに限らず、家族の古い記録をどう未来へ渡すかを考えるきっかけにもなりそうだ。