知らないって怖い #3
わかったつもりだった話
「本質のコンパス」というサイトを、いまClaudeと一緒に作っているところなのですが、その中身を、ほぼ何も知らないまま組み立てていた、ということに、つい先日気づいてしまいました。
ことの始まりは、Claude.aiにサイトの「指示書」を書いてもらったときのことです。
そのなかに、「Astro を使います」と書いてありました。
『Astroかぁ……なんだろな〜』
そう思いつつ、特に深く調べることはしませんでした。だって、知らなくても、サイトはちゃんと作れてしまうのですから。
しかも、悪いことに、WordPressにも「Astro」という名前のテーマがあるのを、私は知っていました。だから心のどこかで、『あ〜、たぶんあれと似たような”見た目を変えるテーマ”の話なんでしょ』と、ぼんやり思い込んでいたのです。
これが、いちばんやっかいなところでした。
知らないものに出会ったときに、自分のいままでの経験のなかから、似たようなものを引っぱり出してきて、勝手に当てはめてしまう。
それで、「あ〜、はいはい、あれね」と、わかったつもりになる。
実際にはぜんぜん別のものなのに、こちらは”わかった”顔をして通り過ぎてしまっているのです。
これ、ちょっと怖いなと思いました。
きっかけは、まったく別の方角からやってきた
別件で、マリンスポーツの予約システムの構成案を、Claudeと一緒に考えていたときのことです。
その構成案のなかに、ふいに「SvelteKit」という名前が出てきました。
『SvelteKit……?なんだろな、それ』
知らない名前だったので、Claudeに「SvelteKitって、簡単に言うとなに?」と聞いてみました。
すると、返ってきた説明のなかに、こんな一文があったのです。
Astro と似た立ち位置ですが、性格はかなり違います。
…え。
Astroって、”立ち位置”があるものなんですか?
私はずっと、Astroは「サイトの見た目を決めてくれるテーマ」のようなものだと思い込んでいました。WordPressに同じ名前のテーマがあるので、なおさらでした。
ところが、ぜんぜん違いました。Astroはテーマではなく、フレームワークと呼ばれるものだったのです。
サイトは、3階建て…ではなく、4階建てだった
ちょっと整理してみました。
いま私が作っている「本質のコンパス」の中身は、こうなっていました。
1階: Cloudflare Pages — 置き場所
2階: Astro — 土台になっているフレームワーク
3階: AstroWind — 着せ替えに当たるテーマ
4階: Tailwind CSS — 細かい見た目を整える道具
私が触っているのは、ほとんど3階だけ。1階・2階・4階のことを知らなくても、サイトはちゃんと組み上がっていってくれます。
ふしぎな感じです。
ついでに、Tailwindの正体もわかった
サイトのコードを覗くと、class="text-lg font-bold mt-4" みたいな、ハイフンでつながった呪文みたいな文字列が、あちこちに並んでいます。
『なんなんだろう、これ……』と、ずっと思っていました。なんとなく”見た目を変える呪文”なんだろうな、くらいにぼんやり眺めていたのです。
それが、Tailwind CSSという名前の道具だったのですね。
呪文に、名前があった。それだけのことなのですが、なんだか嬉しい発見でした。
カフェに例えると、すっと入ってきた
Claudeにもらった例えが、とてもしっくりきたので、そのまま借ります。
Astro = カフェの建物そのもの(厨房、レジ、配膳カウンター)
AstroWind = カフェの内装(壁の色、テーブルの形、メニューの装丁)
Tailwind CSS = 内装をちょこちょこ調整する、職人さんの工具箱
私は、内装業者(AstroWind)に丸ごとお任せしてお店を開こうとしていたので、建物の構造を知らなくてもなんとかなっていた、ということでした。
なるほど〜、と思いました。
WordPressとは、何が違うんだろう?
私は「Webサイトを作る = WordPress」みたいな世代の人間です。だから無意識のうちに、AstroもWordPressの仲間だろうと思い込んでいました(しかも、WordPressに「Astro」という名前のテーマがあるものですから、なおさら混同していたのです)。
ところが、根っこから違いました。
WordPress
訪問者が来たそのときに、HTMLを組み立てる。
→ 注文を受けてから調理する、街の食堂のようなもの。
Astro
あらかじめHTMLを全部作っておいて、訪問者にはそれを渡すだけ。
→ 朝のうちに作り置きしておく、デパ地下のお惣菜のようなもの。
この違いから、こんな現実的な差が出てくるそうです。
WordPressは遅くなりがち、Astroは速い
WordPressはサーバー代がかかる、Astroはほぼ無料で動く
WordPressはハッキングされやすい、Astroはされにくい
WordPressはブラウザで記事が書ける、Astroはテキストエディタが必要
ぜんぜん違うものだったんですね。同じ名前のテーマがあるから、似たようなものだとばかり思っていました。
ちなみに、優劣の話ではないらしい
「で、どっちがいいの?」と思いますよね。私もそう思いました。
聞いてみたら、向いている用途が違うだけ、ということでした。
WordPressは、複数の人で運営する、機能の多いサイトが得意
Astroは、個人で発信する、軽くて速いサイトが得意
「本質のコンパス」は後者なので、Astroで正解だったみたいです。
…正解というか、Claudeが提案してくれたものを、なんにも考えずに使わせてもらっていただけなんですけどね。
ついでに、時代の流れも教えてもらった
Claudeにいろいろ聞いていたら、Webサイトを作る道具の流行り廃りも、ついでに教えてもらいました。
2005〜2015年ごろ — WordPressが全盛だった時代
2015〜2020年ごろ — 「速さ」が大事と言われはじめて、JekyllやHugoといった道具が登場
2020年〜いま — Astro、Next.js、SvelteKitなどに移ってきている
なるほど〜。
私のなかでは、Webサイトといえば WordPressのままで、ずっと時間が止まっていたみたいです。
知らないあいだに、ずいぶんいろいろなものが入れ替わっていたんですね。
知らないことのハードルが、下がった
ここまで書いてきて、ちょっと不思議に感じているのは、Astroのことが少し分かった、ただそれだけで、なんだか嬉しいということです。
「これを何に活かそう」とか、「だからどうする」とか、そういうことは、まだ皆目わかりません。ただ、ちょっと知ってみる、というだけのことが、こんなに楽しいのかと、自分でも驚いています。
なんでそう感じるんだろうと思ったら、たぶん、ひとつ思い当たることがありました。
質問をすると、Claudeは私の知識レベルに合わせて答えてくれる、ということです。
「Astroってなに?」と聞けば、テーマと混同していた私に向けて、「テーマじゃなくてフレームワークですよ」と、混同の理由ごと丁寧に説明してくれる。
専門用語で煙に巻くでもなく、子ども扱いするでもなく、ちょうどいい温度で、こちらの分かるところまで降りてきて話してくれる。
知らないことを質問するハードルが、めちゃくちゃ下がってしまった、という感じがします。
知らないものを、知らないと気づくのは難しい。
知っているものに勝手に重ねて、わかったつもりになっている方が、たぶんずっと多い。
知らないって、怖い。
この記事は「本質のコンパス」ニュースレターからの転載です。



