深呼吸をしてみる


地方に生まれ、公立の小中学校に通った。
やんちゃな子が幅を効かせていて、
先生にも好かれていた。

優秀な成績を取り、校則を守る僕は、
疎ましがられていた。
自分は間違っていないはずなのに、
といつも憤っていた。

だから満たされなさを感じて、
ずっと何者かになりたかった。

なんでもいいから「凄いね」と言われて、
自分は存在してもいいんだと、思いたかった。

そのために自己規律を始めた。
生活からあらゆる無駄を取り除き、ひたすら働いた。
家具を捨て、食事と衣類を固定し、同じ時間に起きた。

そうして少し「成功」した後に、
愛おしくなったのは自分の「無駄」な部分だった。

お酒を飲んだ赤い顔で、仕事以外の話をするのが好きだ。
学習するぞ、なんて気張らずに、ゆっくり読書して感想を語るのが好きだ。
洗い物のことを忘れて、
誰かのために何皿も使って朝ごはんを並べるのが好きだ。
人が好きだ。

隣人との時間を無駄と切り捨てずに、手で掬い上げたい。
こぼれてしまうものもあるけれど、よよよっと、大切にする。
手のひら二つ分の小さな幸せを、深呼吸して噛み締めていたい。