こんにちは。今回ご紹介する論文はこちらです。

Time of day of CAR T-cell infusion and outcomes in large B-cell lymphoma

Blood (2026) 147 (12): 1315–1322.

https://doi.org/10.1182/blood.2025031476

 

免疫細胞のサーカディアンリズムが化学療法の予後に影響するという論文が近年ちらほらと出ています。今回はLBCLへのCAR-T細胞輸注時間が予後に影響するかも?という後方視的研究です。

 

方法:

2017-2025年の間、7つの施設でCAR-Tを受けた1052人のR/R LBCL成人患者を解析した。

 

結果:

CAR-T輸注時間の中央値は11:48 AMだった。

輸注時間が1時間遅くなるごとに再発・再燃・死亡リスクが上昇した。これは施設・どのCAR-T製品か・主要な臨床変数で調節しても変わらなかった。

正午より前に輸注した場合の1年の無増悪生存期間は51.4%だったが、正午より後の輸注では35.2%だった。ただし、全生存率は変わらなかった。

輸注時間で免疫的な毒性は変わらなかったものの、遅い時間の輸注では炎症マーカーのピークが高く、day7でのCAR-T細胞 expansionが減っていた。

 

結論:CAR-T細胞の輸注時間は治療効果に影響するかもしれず、今後の戦略で考慮されるべきかもしれない。

 

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化学療法や免疫チェックポイント阻害薬がサーカディアンリズムに影響されるのはなんとなくわかるのですが、「ついさっきまで凍結されて眠っていたであろうCAR-T細胞」までもが影響されるかもしれないというのは、とても驚きでした。

細胞そのものというより、周囲の環境(ホルモン量とか?)の影響でしょうか。

 

後方視的な研究であり、「すべてのCAR-T輸注は午前にすべきである!」とまではまだ言えないところですが、気になる論文でした。

 

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おまけ画像:最近の画像があんまりなくて引っ張り出してきました。福岡市内で食べたカンジャンケジャンです。

こんにちは。今回ご紹介する論文はこちらです。

 

Impact of TP53 mutations and their variant allele frequency in adults with newly diagnosed acute lymphoblastic leukemia

Blood (2026) 147 (5): 547–556.

https://doi.org/10.1182/blood.2025030498

 

TP53変異は様々な悪性腫瘍において予後不良因子として知られています。

ただ、成人ALLにおいてはその意義とともに変異頻度(VAF)の意義が今まで不明でした。

 

この論文はMDアンダーソンがんセンターにおける後方視的な解析で、ALLにおけるTP53およびそのVAFの意義を調べてみたというものです。

 

方法:2012-2024年の初発成人ALLで、NGSによりTP53変異を検索した652人を解析した。

 

結果:ALL全体でTP53変異は17.2%認められた。

TP53変異が多いのは高齢者(TP変異+ vs 変異-でmedian 61歳 vs 40歳)、Ph(-)B-ALL(28%。その他の型では3%)だった。

TP53のVAFのmedianは42%だった。

 

60歳以上の群ではTP53 VAFが45%以上であることが予後不良因子であり、この群は4年EFSとOSが28%で、再発リスクが上昇した。この傾向はイノツズマブオゾガマイシン(INO)やブリナツモマブ(BLIN)をfront lineで使用した群でも見られた。

 

60歳未満の群でINOとBLINをfront lineで受けた群においてはTP53やそのVAFは予後と関連しなかった。しかしながらVAFが45%以上の群では、45%未満の群と比較して累積再発率が増加した(35% vs 8%)(ちなみにTP53変異がなく、その他の予後不良因子もない群での累積再発率は4%)。

 

多変量解析では、60歳以上においてはTP53のVAFが45%以上であることが予後関連因子として有意だった。一方、60歳未満においてはTP53のVAFが45%以上であることは予後を予測しなかった。

 

治療後、寛解に入った場合も44%の患者でTP53が残存した。この群は再発が多いが(29% vs 8%)、あくまでサブグループ解析であり患者数も少ないので、意義についてはまだはっきりしない。

 

結論:60歳以上のPh(-)ALL患者においてはTP53 VAFが高い場合予後不良である。VAFが高いことは若年者においても再発リスクの上昇に関連するが、予後との独立した関連はない。

 

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若年者では強い治療ができるので、TP53変異もリカバリーできるということでしょうか。

今までALLに関してはPhをメインに見ていたのですが、ヘムサイトが承認され、TP53など、その他の遺伝子変異を見つけてしまってその解釈に悩むことが今後増えてきそうな予感がしています。 

 

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おまけ写真:ラーメンにチャーハンをつけてしまったときの記念写真です。

こんにちは。今回ご紹介する論文はこちらです。

 

Intestinal hepcidin overexpression promotes iron deficiency and counteracts iron overload via DMT1 downregulation 

Marion Felabregue et al. 

Blood (2025) 146 (24): 2863–2869.

https://doi.org/10.1182/blood.2025028370

 

ヘプシジンは肝臓で作られる「体内の鉄を減らす方向に作用する」ホルモンです。

しかし最近の報告では肝臓以外(腸管など)でヘプシジンが産生されていることがわかってきました。

この論文は、腸管でヘプシジンを過剰発現するトランスジェニックマウスを作成し、腸管ヘプシジンの機能を探ってみたという報告です。

 

・腸管ヘプシジン過剰発現マウスは月齢1ヶ月でひどい鉄欠乏性貧血になった。鉄欠乏への反応として、肝臓のヘプシジンが著明に低下した。

・腸管ヘプシジンは腸管フェロポルチン(マクロファージではフェロポルチンを介して鉄の放出が抑制される)は減らさず、腸管細胞のdivalent metal transporter(DMT1)タンパク産生を減らしていることがわかった。鉄の腸管からの吸収も減らしていた。

 

・腸管ヘプシジンが腸管からの供給過剰による鉄過剰症を予防することを示すために、筆者らは腸管内でヘプシジンを産生する組み替え乳酸菌(recLAB)を作成した。

・このrecLABにより、十二指腸のDMT1は速やかに低下し、ヘモクロマトーシスのマウスモデルを鉄過剰から守ることに成功した。

 

→これらのデータにより、腸管のヘプシジンは、腸管細胞におけるDMT1を介して全身の鉄ホメオスターシスを調節していることがわかった。鉄代謝異常や血液疾患への治療の糸口になるかもしれない。

 

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ヘプシジンといえは、血液内科医が専門医試験のときに覚えるものの以後使うことなく忘れることで有名なホルモンです(言い過ぎ)。

なんかこうふわっと「腸管の鉄吸収に関与するらしい」くらいしか覚えていなかったのですが、どう具体的に鉄代謝に関わってくるのか少しずつ解明されてきていようです。

 

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おまけ画像

街でみかけたムーミンの像です。今年はやたらムーミングッズを見かけるなと思ってたのですが、ムーミン80周年なんですね。