書籍要約『スモールファームの未来:ローカル経済、自給自足、農業の多様性、そして共有する地球を基盤とした社会のための論説』クリス・スメイジ 2020年

ガーデニング・農法コミュニティローカリゼーション・脱中央集権・分散化生態経済学・脱成長

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『A Small Farm Future:Making the Case for a Society Built Around Local Economies, Self-Provisioning, Agricultural Diversity and a Shared Earth』Chris Smaje 2020

日本語タイトル:『スモールファームの未来:ローカル経済、自給自足、農業の多様性、そして共有する地球を基盤とした社会のための論説』クリス・スメイジ 2020年

目次

  • 序章 ジャコウネコの物語 / The Civet’s Tale
  • 第一部 スモールファームの未来はあるか? / A Small Farm Future?
  • 第1章 10の危機 / Ten Crises
  • 第2章 厄介な問題:進歩とその他のユートピアについて / Wicked Problems:Of Progress and Other Utopias
  • 第3章 農民の帰還 / The Return of the Peasant
  • 第二部 スモールファームの生態学 / Small Farm Ecology
  • 第4章 生態系としての農場 / The Farm as Ecosystem
  • 第5章 耕作の一角 / The Arable Corner
  • 第6章 代替農業に関する覚書 / A Note on Alternative Agriculture
  • 第7章 薬剤師の庭 / The Apothecary’s Garden
  • 第8章 野の獣たち:買い物通路の倫理を超えて / Beasts of the Field (and Garden):Beyond Shopping Aisle Ethics
  • 第9章 実をつけた棘:アグロフォレストリー / The Fruitied Thorn:Agroforestry
  • 第10章 飢饉 / Dearth
  • 第11章 代替農業は私たちを養えるか? / Can Alternative Agriculture Feed Us?
  • 第三部 スモールファーム社会 / Small Farm Society
  • 第12章 世帯、家族、そしてその先 / Households, Families and Beyond
  • 第13章 コモンズを複雑化する:土地の保持と共有 / Complicating the Commons:Holding and Sharing the Land
  • 第14章 市場へ行く / Going to Market
  • 第15章 田舎と都市 / The Country and the City
  • 第16章 宗教から科学へ(そして戻る) / From Religion to Science (and Back)
  • 第四部 スモールファームの未来に向けて / Towards a Small Farm Future
  • 第17章 代替わりの国家 / The Supersedure State
  • 第18章 国民国家から共和国へ / From Nations to Republics
  • 第19章 再構成された農民層 / Reconstituted Peasantries
  • 第20章 剥奪 / Dispossessions
  • 結語 ゴールドマン・サックスはあなたが鶏を飼うことを気にするか? / Does Goldman Sachs Care If You Raise Chickens?

本書の概要

短い解説:

本書は、気候変動、エネルギー、土壌、経済格差など複合的なグローバル危機に対し、「スモールファーム(小規模農)の未来」こそが最も実現可能で公正な解決策であると論じる。著者は、産業型農業と無限成長を前提とする資本主義経済の限界を批判し、地域経済、自給自足、労働集約型農業に基づく社会への移行を提唱する。対象読者は、環境問題、経済学、農業政策に関心のある一般知識人や活動家、そして持続可能な未来を模索する全ての人々である。

著者について:

著者のクリス・スメイジは元社会科学者(サリー大学社会学部、ゴールドスミス大学人類学科に在籍)で、現在はイングランド南西部のサマセットで17年以上にわたり小規模農場を共同運営する実践的な農家である。アグロエコロジーの実践と政治に関するブログ「Small Farm Future」や、『ザ・ランド』などへの寄稿を通じて、理論と実践の両面からスモールファームの可能性を探求している。

テーマ解説:

本書の主要テーマは、無限成長を目指す資本主義の終焉と、それに代わるものとしての「小規模農を基盤とした分散型の地域社会」への政治的・経済的・文化的な移行である。

キーワード解説:

  • スモールファーム・フューチャー:化石燃料やグローバル資本に依存せず、地域の生態系に根ざした小規模農業を社会の基盤とする未来像。
  • 脱成長:経済成長を唯一の目標とする資本主義から脱却し、人間の福祉と生態系の健全性を優先する経済思想。本書はその実現形態として農業を重視する。
  • 農民:資本主義の論理に完全には回収されない、家族労働と自給自足的な経済実践を行う小規模農業従事者のこと。現代においても消滅せず、未来の重要な担い手となる。
  • リカードの地代:土地の所有権から生じる不労所得。資本主義下での土地投機の温床であり、公正なスモールファーム社会の実現にはこのメカニズムからの解放が必要とされる。
  • 代替わりの国家:中央国家の力が衰退する中で、地域社会が不完全ながらも自律的に自らの生存基盤を再組織化していくプロセスを蜂の「女王蜂の交替」になぞらえた概念。

3分要約

本書は、現代の複合的危機(気候変動、エネルギー、土壌、水、生物多様性、経済、文化など)に対する最も有望な解決策として、「スモールファーム・フューチャー(小規模農の未来)」を提示する。著者は、現代の産業型農業とそれに依存するグローバル資本主義が、これらの危機の根本原因であると断じる。技術楽観主義や「進歩」の物語を痛烈に批判し、市場メカニズムやテクノロジーへの過度な依存ではこれらの「厄介な問題」は解決できないと論じる。

第二部では、代替農業の生態学的原理を探求する。著者は、一見効率的な穀物生産(耕作の一角)への過度な依存を否定し、多様な動植物を組み合わせた労働集約的な小規模農業こそが、エネルギーや養分の地域内循環を可能にし、土壌や気候の問題を緩和する最適な形態であると主張する。著者は自身のモデル分析を通じて、小規模農業が世界の人口を十分に養う潜在能力を持つことも示す。

第三部では、そのような農業を支える社会のあり方を論じる。ジェンダー平等や個人の自律性を確保したうえで、家族経営的な「世帯」を基本単位としつつ、私有地とコモンズを組み合わせた柔軟な土地所有制度を提案する。市場経済とは距離を置き、地域通貨や相互扶助に基づく「市場へのオプショナルな関与」を特徴とする社会像を描き、脱商品化された経済の重要性を強調する。

第四部では、現状の資本主義国家からスモールファーム社会への政治的移行戦略を考察する。著者は「フォートレス・ノース」のような閉鎖的な未来を拒否し、中央国家の衰退を逆手に取った「代替わりの国家」というシナリオを提示する。ここで鍵となるのは、国民国家ではなく、共和主義的な価値観に基づく地域共和国であり、ラテンアメリカなどの農民運動から学びつつ、先進国においても新たな農民層を再構成する必要があると結論づける。

各章の要約

序章 ジャコウネコの物語

高級コーヒー「コピ・ルアク」を事例に、現代社会にはトレードオフが存在し、単一の「解決策」はないと論じる。現代文化は「進歩」の物語に魅了され、高効率・省力化が常に善とされるが、それは資本主義という特定の政治経済の論理に過ぎない。著者は自身の小規模農場を訪れる人々の3つの反応(羨望、憐れみ、批判)を紹介し、「スモールファーム・フューチャー」という選択肢を真剣に考える必要性を説く。この未来はノスタルジーではなく、自律性や精神的な充足を求める現実的な選択肢である。

第一部 スモールファームの未来はあるか?

第1章 10の危機

人口、気候、エネルギー、土壌、物資、水、土地、健康・栄養、政治経済、文化という10の相互連関する危機を詳細に分析する。人口問題は消費パターンと切り離せず、気候危機の主因は化石燃料である。エネルギー危機は「成長」という資本主義の論理と不可分であり、土地問題では「スパーリング(土地節約)」対「シェアリング(土地共有)」論の単純な枠組みを批判する。著者はこれらの危機の根底に、無限成長を求める資本主義の政治経済とそれを支える文化があると結論づける。

第2章 厄介な問題:進歩とその他のユートピアについて

第1章で示した危機は「厄介な問題」であり、技術的な「解決策」は存在しない。進歩、ロマン主義、成長、発展といった概念の危険性を検討し、それらがスモールファームの議論を妨げていると論じる。高テク・オートメーションのユートピアに幻想を抱くのではなく、人間の労働と自然の制約を受容する「節度のあるユートピア」としてのスモールファーム社会を提示する。ロバート・ノージックの「ユートピアのための枠組み」を参照し、多様な生のあり方を許容しつつ、共通して自給自足的な要素を含む社会像を描く。

第3章 農民の帰還

「農民(ピーサント)」という言葉がもつネガティブなイメージを脱構築し、現代世界においても小規模農家(農民)は消滅しておらず、世界の労働力の主要な部分を占めていると指摘する。資本主義は農民を「時代遅れ」と見なすが、それは誤りである。むしろ、グローバル資本主義の危機が深まる中で、人々は自律性と安全保障を求めて、再び「庭を奪回(リキャプチャード・ガーデン)」する方向へ向かうだろうと論じる。問題は農民の「本質」ではなく、資本主義に対抗しうる自律的な生計戦略としての小規模農の可能性である。

第二部 スモールファームの生態学

第4章 生態系としての農場

植物の生存戦略(ストレス耐性型、競争型、ルデラル型)を紹介し、現代農業が「ルデラル(撹乱・高栄養)」戦略に過度に依存していることを明らかにする。この戦略は高収量をもたらすが、土壌流出や水問題など多くの危機の原因でもある。持続可能な農業を考えるには、労働投入と環境負荷のトレードオフを直視し、低投入・低負荷の「ストレス耐性型」と高投入・高生産の「ルデラル型」の中間を目指すべきだと論じる。スモールファームは、労働集約的でありながらも、このバランスを達成する上で優位性を持つ。

第5章 耕作の一角

人類がコムギ、イネ、トウモロコシといった少数の穀物(ルデラル作物)に過度に依存する「耕作の一角」の問題を分析する。この依存はグリーン革命によって加速され、単一作物への依存は生態系の脆弱性と社会経済的な不平等を生み出している。多年生穀物の育種のような技術的解決策の可能性を認めつつ、それが「耕作の一角」の問題を根本的に解決するものではなく、むしろ多様な地域農業を軽視する結果になりかねないと批判する。真の解決策は、穀物への依存を減らし、より多様なローカルな農法へと移行することにある。

第6章 代替農業に関する覚書

有機農業、再生農業、パーマカルチャーといった「代替農業」の潮流を批評的に検討する。これらの運動には貴重な知見がある一方で、トレードオフを無視した「解決主義」に陥る傾向もあると批判する。特に「バイオミミクリー(自然模倣)」の単純な適用や、再生農業における炭素隔離の過大評価を警告する。重要なのは、特定のレッテルにこだわるのではなく、人間の労働力を主要な投入財とする「バイオインテンシフィケーション(生物集約)」の原則を理解し、それぞれの土地に適した知恵を「賢い無関心」で取捨選択することである。

第7章 薬剤師の庭

労働集約的な「庭」が、持続可能な農業の最適単位であると論じる。庭での生産は、健康的な野菜や果物を提供し、身体活動や自然との繋がりを促進する。さらに、小規模農は規模の経済が働かないどころか、「逆生産性関係」が成立することが多く、大規模農よりも土地当たりの生産性が高い場合がある。現代の食料システムが加工食品や穀物に偏っている問題を指摘し、自給自足的な庭での生産を中心とした社会こそが、健康で環境負荷の低い未来をもたらすと主張する。

第8章 野の獣たち:買い物通路の倫理を超えて

畜産の環境負荷(温室効果ガス、土地利用)を認めつつ、低エネルギー社会において「デフォルト・リブストック(初期設定としての家畜)」が果たす重要な役割を論じる。家畜は、不耕作地の管理、廃棄物の循環、肥沃度の維持という農作業の一部を担う「農場の労働力」である。スーパーマーケットでの「エシカル」な選択(買い物通路の倫理)ではなく、地域の生態系に根ざした「農民の倫理」に基づく畜産のあり方を模索すべきである。ただし、低エネルギーで人口密集した未来において、家畜、特に反芻動物の数は現在より大幅に減少せざるを得ないとも予測する。

第9章 実をつけた棘:アグロフォレストリー

樹木を組み込んだ農業(アグロフォレストリー)の可能性と限界を探る。樹木は長寿命であるがゆえに、繁殖に必要なエネルギーを種子や果実に投資する割合が低く、年単位の草本作物と比較すると収量で劣るという「実をつけた棘」のトレードオフがある。特に高緯度地域では、アグロフォレストリーだけでは人間の栄養需要を満たせない。しかし、草本の一年生作物と樹木を組み合わせた「ウィーク・ペレニアル・ビジョン(弱い多年生ビジョン)」は、生態系の健全性を高める上で有望である。重要なのは、「野生」へのノスタルジーではなく、人間が積極的に参与する「リワイルディング」の視点である。

第10章 飢饉

スモールファーム社会は飢饉を引き起こすという批判に対し、歴史的に見て市場への統合や「近代化」こそが飢饉の主要な原因であったと論じる。十分な土地へのアクセスを持つ独立した小農は、災害時にも自給可能なため、飢饉のリスクが低い。現代の慢性飢餓も、食料生産量の不足ではなく、貧困や不平等といった社会経済的要因に起因する。したがって、世界的な市場に依存する現在のシステムよりも、小規模でローカルな農業を推進することが、飢餓と食料不安を緩和する有効な手段となる。

第11章 代替農業は私たちを養えるか?

気候難民の受け入れや化石燃料不使用といった厳しい仮定のもと、2050年のイギリスをモデルに小規模農業による自給可能性をシミュレーションする。その結果、土地生産性に大きな余裕があり、小規模で労働集約的な農業によって国民を十分に養えることが示される。ただし、その際の食事はジャガイモなどのデンプン質に偏り、肉や脂肪分が少ない「質素な」ものになる。このモデルが示すのは、土地の「収容力」が本質的な制約ではなく、政治・経済・社会の制度設計こそがスモールファーム社会の成否を分ける鍵であるということである。

第三部 スモールファーム社会

第12章 世帯、家族、そしてその先

スモールファーム社会の基本単位としての「世帯」を分析し、その長所(生態学的効率性、規律ある労働力)と短所(特に女性に対する家父長制的な抑圧の可能性)を検討する。著者は、近代的な個人の権利や公的領域を擁護しつつ、資本主義に代わるものとして家族経営的な世帯を復権させるべきと論じる。男女共同の「ハズバンドリー(土と家を慈しむこと)」という概念を提唱し、家族内の抑圧に対する制度的なセーフガード(公的領域や財産権)の必要性を強調する。

第13章 コモンズを複雑化する:土地の保持と共有

スモールファーム社会における土地所有の複雑な問題を論じる。私有財産は時に自由をもたらすが、投機の対象となるときは抑圧的である。過去の農業社会では、私有地とコモンズはしばしば共存していた。現代のスモールファーム社会においても、「タイト・コモンズ(緊密なコモンズ)」と呼ばれる、公正な分配を前提とした小規模私有地と、それを補完するローカルな共同資源管理の組み合わせが最も有効である。絶対的な私有や完全な共有ではなく、「用益権」と「小さな私有者の自律性」を組み合わせた柔軟な制度を構築すべきである。

第14章 市場へ行く

資本主義社会の市場とは異なる、スモールファーム社会における「市場へのオプショナルな関与」のあり方を考察する。著者は、閉店したパン屋や売らない豚肉のエピソードを挙げ、生計が市場への全面的な依存から自由であることの重要性を説く。ここでの経済の基本は、貨幣が希少であり、家族や地域内での信用(信頼)を基盤とした「非可読な」経済活動である。重要なのは、市場を拒絶することではなく、資本が論理である「M-C-M’」のスパイラルに巻き込まれず、コミュニティと労働の質を優先する「市民経済」の構築である。

第15章 田舎と都市

人口が都市から地方へと再分散するスモールファーム社会の居住パターンを論じる。フォン・チューネンの『孤立国』のモデルを参照し、現代の都市が生態系から資源を一方的に吸い上げる「植民地的」な構造を持っていることを批判する。代わりに、サービスが都市から地方へと「遠心的」に流れる、分散型の定住パターンを提唱する。現代のメガシティは持続不可能であり、将来はファームステッドや村落、マーケットタウンを基盤とした、より生態学的にフィードバックの効く社会構造へと移行すべきである。

第16章 宗教から科学へ(そして戻る)

スモールファーム社会への文化的・心理的な移行を論じる。禁欲主義と快楽主義、そして「聖なるもの」をめぐるステータス競争という人類学的な視点から、現代資本主義が失敗する理由を分析する。現代人は消費者としての「キング」の地位を追い求めるが、それは虚無的なステータス競争に過ぎない。スモールファーム社会では、「独立した家計主」というロールモデルが再び重要になる。ここでは、「大物(ビッグマン)」や「聖者」といった異なるステータス戦略が均衡し、人々は過度な競争から解放され、実践的で自立的な生に意味を見出すことができる。

第四部 スモールファームの未来に向けて

第17章 代替わりの国家

スモールファーム社会への政治的移行シナリオとして、中央国家の力が衰退する中で地域社会が自律性を高めていく「代替わりの国家」モデルを提示する。これは、富裕国が自らの利益を守る「フォートレス・ノース」シナリオよりも現実的で望ましいと論じる。資本の浸透、軍事力、ミドルクラスによるジェントリフィケーションなどの脅威に対して、地域社会はいかにして自律性を守るべきかを考察する。重要なのは、物理的な壁ではなく、共和主義的な価値観と人間の権利に基づく制度的な「壁」を構築することである。

第18章 国民国家から共和国へ

農業問題をめぐるマルクス主義的な階級闘争論の限界を指摘し、現代政治の基軸である「国民国家」から、より柔軟な「共和国」への移行を提案する。国民国家は歴史的に「発明」された人工的な共同体であり、感情的な結束をもたらす一方で、排除や暴力を生み出しやすい。代わりに、特定の土地に根ざし、現実的な問題解決を重視するシティズンシップ共和主義の伝統に依拠すべきである。スモールファーム社会は、特定のアイデンティティではなく、実践的な生計と対話によって結びついた地域共和国として機能する。

第19章 再構成された農民層

移行期において、人々は資本主義の論理から自律した生活を求め、「農民」として再構成されていくプロセスを描く。2007年のニェレニ宣言に代表される「フード・ソブリンクティ(食料主権)」運動と連帯しつつ、先進国においても「オート・システム(自己組織的システム)」としての小規模農業を構築する必要がある。特定の農業ラベル(有機など)への盲信を排した「賢い無関心」と、地域固有の条件への繊細な適応こそが、持続可能な小規模農業の鍵となる。

第20章 剥奪

歴史的に見て、人々が土地から切り離されてきた「剥奪」のプロセスを振り返り、スモールファームへの移行がいかにしてこの負の遺産と向き合うかを論じる。イギリスでは、スモールホルダーを生み出したテューダー朝の政策と、それを葬り去った18世紀の大土地所有の歴史が参考になる。現代の「ポピュリズム」の台頭を、中小農民とグローバル資本の対立の再来と捉え、階級やアイデンティティを超えた「プログレッシブ・ポピュリズム」の可能性を探る。重要なのは、非階層的で自律的な生を営む「ディーセント(良識)」な社会を再建することである。

結語 ゴールドマン・サックスはあなたが鶏を飼うことを気にするか?

「ゴールドマン・サックスはあなたが鶏を飼うことを気にしない」という批判に対し、著者は個人のニワトリ飼いが体制を変えることはないと認めつつも、それが未来への重要な第一歩であると反論する。巨大なテクノロジーやグローバルな政治に依存した「フォーク・ポリティクス(地域密着型政治)」批判は、資本主義の論理を内面化しているに過ぎない。真の変革は、「小さく、ゆっくりとした」解決策の積み重ねから始まる。そして、その第一歩は、たとえ不完全であっても、自分たちの手で食料を育てることから始まるのである。


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