成瀬の物置き 2026/May

何かしらの破片を積み上げていきます。
いつか一つの大きな“何か”になることを祈って。


目次

小説(文字事)みたいなもの

2026年5月22日(金曜日)

無音の楽団 Re:Praying(カクヤとサレトナとフィリッシュ)

 一年図書室作成の途中で、サレトナに好きな動物を聞いてみた。
「たぬきかしら」
「たぬき」
「ええ」
 予想の斜め上をいく返答にカクヤはなんと返答するか悩んだ。猫や犬ではなく、狸。カクヤは狸の名前は知れども、姿は太い尻尾しか浮かばない。顔も体もずんぐりむっくりとした茶色い生き物だ。
「なんでたぬきなんだ」
「可愛いじゃない。なんでも食べるところとか、寒くなるとすごい毛深くなるところとか。あとね、フィリッシュもたぬきの獣人の血を引いているのよ」
「それって、フィリッシュが狸じゃなかったら、狸のことをそこまで好きにならなかったかもしれないのか」
 あと、自分に言ってはならないことをサレトナは口にしてしまった気がする。フィリッシュは狸の血を引いていることを誇っているのか恥じているのか。問題はその点だ。清風には言わないようにしようと決めた。
「うーん。フィリッシュが可愛いのはたぬきの血を引いているからとも思ったけど」
「サーレトナ!」
 どん、とフィリッシュがサレトナに背中から抱き着いていく。サレトナは振り向いた。
「あのね、私は狸の血を引いていなくとも可愛いわよ?」
「でも、たぬきの血を引いているからさらに可愛いんじゃない?」
 カクヤはこっそりと立ち去りたかった。だが、サレトナを置いていくわけにもいかず、二人のほのぼのとしながらも冷気漂うやりとりを見守る。心中は空中綱渡りをしているように落ち着かなかった。
「カクヤもたぬきは可愛いと思うわよね」
 とても困る質問を手渡されてしまい、カクヤは曖昧に笑う。可愛くないと言ったらサレトナは悲しむだろうし、可愛いと言ったらフィリッシュは激怒する。
「カクヤ?」
「アラタメ」
 カクヤは笑ったままだった。

 フィリッシュさんが狸の血を引いていることを忘れがちです。
 サレトナちゃんは少し不細工な造りをしている方が可愛いと思うタイプです。


2026年5月20日(水曜日)

無音の楽団 Re:Praying(サフェリア)

 カクヤは覚えているかしら。
 初めてルリセイの街へ歌夜が来たときに、私と一緒にカクヤは歌夜の方へ花束を渡したの。決して目立つ街ではないのに、立ち寄ってくださってありがとうという思いを込めて。
 すると、歌夜の方はカクヤに目線を合わせて言ってくれたわ。
『君も歌が好きなのだろう。目を見たら伝わってくる。いつか、また来るからそのときは一緒に歌を唄おう』
 カクヤは覚えているかしら。
 なんて返事をしたのかを。
 忘れていても構わないけれど、覚えているのなら残酷ね。
『はい。サフェリアのためにも、うたいます』

 珍しくポエティック。
 サフェリアさんというのも珍しく。


2026年5月7日(木曜日)

無音の楽団 Re:Praying(セキヤとソレシカ)

 元気ではあるが、能天気ではない声が響き渡る。
「やあ、ソレシカ。元気かな」
「こんにちは、セキヤ先輩。元気ですけど何か用ですか」
「講評試合の備えはどうかと思ってね。カクヤの負け癖は直ったかな」
 目の前にいるセキヤ・トライセルという先輩はソレシカのチャプターのリーダーであるカクヤ・アラタメのことを過剰に気に入っている。サレトナ・ロストウェルスもお気に入りのようだ。だから、これまでソレシカと会話をしたことはあまりなかった。
 今回、声をかけてきたのは「講評試合」でのカクヤの動きがよほど気になるのだろう。
「なんだかわかりませんけれど、あいつは張り切っているので大丈夫じゃないですかね」
 大丈夫ではないとしたら、競う相手が同じクラスの清風がリーダーを務めるチャプターである「ユユシ」ということだ。清風の性格からして、勝ちを狙いにいくことは間違いない。だから、あとはどこまで食らいつけるかが勝負になる。
「大丈夫ならいいが。なに、負けたらサレトナ嬢が可哀そうだと思ってね。何やら約束を交わしていたから」
「それはいやらしい」
「いやらしくはないさ。可愛いものだよ」
 そうして微笑むセキヤの表情の柔らかさに、ああ、この人は本気でカクヤとサレトナのことを気にかけてくれているのだとソレシカにも伝わってきた。
「それで、手にあるごみを捨ててもいいっすか」
 いまのソレシカは掃除の時間が終わり、ごみを廃棄場に置きに来たところだった。

 本編ではあんまり接点のない二人こそ書いていくスタイルです。


2026年5月1日(金曜日)

無音の楽団 Re:Praying(ロリカとルーレス)

 ふと、ルーレスは気付いた。
「命晶さんも今月が誕生日なんだ」
「うむ。露見したか」
「別に隠すようなことでもないんじゃないかな」
 まるで知られてはならないことが見つかってしまったようなロリカの態度に苦笑してしまう。ロリカはいつもの通り感情の読めない表情のまま、教室の掃除を進めていた。
「今月が誕生日だというのならば、一学年のタトエさんの方が重要だろう。カクヤも祝うために色々と張り切っているのではないか?」
「どうかなあ。ロストウェルスさんの誕生日は祝い損ねたとしょんぼりしていたけれども」
 とはいえ、サレトナの誕生日はセイジュリオの入学式が始まった直後のことだ。フィリッシュのように幼い頃から知っていなくては、祝うことは難しいだろう。 
「まあ、よくある台詞になるが、何もない日など存在しない。全ての日が誰かにとっての特別で、些細な日だ。私の誕生日もそういうものだろう」
「それはそうだけれど」
「だったらなんだ。ルーレスはなにか、私に特別なことをしてくれるというのか?」
 一瞬だけ黙り込む。ロリカに特別なことをする。
「なんだかそれは、とても難しそうだね」
 ロリカが喜ぶ特別なことなど、想像がつかないのだ。
 もう、五月は始まっている。

 五月四日がロリカさんの誕生日なのです。現実ですとこちらもサレトナちゃんと同様にお祝いが難しい方。


イラストみたいなもの

2026年5月29日(金曜日)

 トーンの練習中。
 こちらはモアレになりました。


2026年5月19日(火曜日)

 染みしみカクヤさん。
 久しぶりに彼を描いた気がします。


2026年5月14日(木曜日)

 いつまでも怖い絵のままにしておくのも恐ろしかったのです。
 天使の羽と悪魔の羽のサレトナちゃんになります。
 さて、本当はどちら?


2026年5月11日(月曜日)

 急に怖い絵が描きたくなりまして。
 怖いといいましたらの、サフェリアさんです。まさかこういった形でのヴィジュアル初公開。


2026年5月5日(火曜日)

 PDFに使おうとしましたけれども、変なタイミングで結合してしまったデータしかなく、お蔵入りになるところでしたソレシカさん。
 そういう役回りが多いです。


感想みたいなもの

2026年5月28日(木曜日)

「ひつじ探偵団」の映画が良かったです……今週中に原作も購入したいですね。
いつだって、忘れることで多くの過ちを見逃してきたひつじさんたちでしたが、リリーさんはジョージさんのことを忘れられず、結果として「冬の子」に対する偏見もぬぐい取れないけれど歩み寄る努力をする。
だけれども、かつて「冬の子」であったセバスチャンはもういない。そのことはとてもさみしい。
また、観返したい映画でした。Blu-rayが出たら買おうかしら。


2026年5月20日(水曜日)

暁佳奈先生の「春夏秋冬代行者」も「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」も言葉の選び方が丁寧で綺麗です。
その後に今村翔吾先生の「ひゃっか!」という生け花バトルをテーマにした小説も読んだのですが、上記の三作品とも「花」が出てくるのに受ける印象がすべて異なっていました。
「春夏秋冬代行者」は象徴、「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」は証明、そして「ひゃっか!」は青春、といったところです。

その他

2026年5月2日(土曜日)

「書くこと」だけは執着していたいのですよね。
失い続けている人生ですけれども、いま手に残っているもののほとんどは、書き続けていたから残っているものです。
そのことをどれだけの人は意識しているのでしょう。
書けない普通よりも、書くことのできる異常でありたいです。


    この記事を書いた人

    不完全書庫というサイトを運営しています。
    オリジナル小説・イラスト・レビューなどなど積み立て中。

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