2Dのコンセプトから3Dへ:スタイライズ キャラクター「Stoner」のメイキング
キャラクターアーティスト Maruf Nasir 氏 が、2D のスケッチを 3D化するプロセスを解説します

はじめに
このチュートリアルでは、コンセプトアーティスト Varun Nair氏 の素晴らしいスケッチをもとに制作した「Stoner」の制作プロセスを紹介します。ZBrushモデリングから、Substance 3D Painter でのテクスチャリング、Arnold レンダリングまで、順を追って解説していきます。
完成イメージ
01 コンセプトを読み解く
スタイライズされたキャラクターを扱う場合、まず Photoshop でコンセプトアートの上をトレースして基本的な形に分解すると整理しやすくなります。こうしておけば、3D に落とし込む際に注目すべき大まかな形を把握できます。コンセプトの特徴的な形が3Dモデルにそのまま反映されていれば、それだけで作品の説得力が増すでしょう。
Varun Nair 氏 のコンセプトアート
トレースして基本的な形を把握する
02 リファレンスを集める
コンセプトがシンプルな線画だったため、外見の方向性を決める「ルックデヴ」の段階では自由に解釈できます。このキャラクターはスケートパークにいるスケーターに見えたため、金髪、オーバーサイズのTシャツ、後ろ向きの帽子といった典型的なスケーターのスタイルをリファレンス画像で集めていきました。
ルックデヴで使用したリファレンス画像
03 ZBrush でモデリング
まず ZBrush の[ダイナメッシュ]で 大まかな形を作ります。大きなパーツ(鼻や耳など)には、目的の形に近いダイナメッシュのプリミティブを使用し、低解像度(32〜56)で広範囲に変更を加えていきます。
スカルプトを進めながら必要に応じて解像度を上げていきますが、メッシュが密になりすぎないよう注意しましょう。基本は「大きな形から小さな形へ」というスカルプトの標準的なワークフローで進めます。この段階では、ダイナメッシュの各パーツを分けたまま作業します。
形が定まってきたら全パーツをマージして複製し、複製したメッシュに[Zリメッシャー]をかけます。続けてそのメッシュをサブディバイドし、元のダイナメッシュの形状を再投影します。最後に、元のプリミティブ同士の境界を滑らかに整えます。
スカルプトの各段階:ダイナメッシュで形を作る → マージ → Zリメッシャー
04 Maya でのリポトロジー
[Zリメッシャー]は優れたツールですが、面の複雑さによっては思いどおりのトポロジーにならないケースがあります。そのような場合、Maya で手動リトポロジーを行います。
[Zリメッシャー]適用済みメッシュを7〜10%程度にデシメートして(間引いて)、Mayaに書き出し、[四角ポリゴン描画]ツールでライブメッシュ上に手動でリトポロジーを施します。ここでは、クリーンなループとエッジフローを持つローポリメッシュを目指しましょう。完成したら ZBrush に戻してサブディバイドし、元の[Zリメッシャー]適用済みメッシュからディテールを再投影します。これにより、ピンチングやアーティファクトのないクリーンなトポロジーで、スカルプトの仕上げに進めます。
ライブメッシュ上で[四角ポリゴン描画]ツールで リトポロジーをする
05 残りの衣装を追加する
ボディと頭部のスカルプトが完成したら、衣装の制作に移りましょう。帽子は球体の下半分を削除したシンプルな形からスタートし、「Move」ブラシでスケッチに合わせて形を整えます。
帽子のロゴなどの小さなディテールは、Photoshop で作成したアルファを使って対象エリアをマスクし、「0」で抽出します。次に抽出したロゴをデシメートして Maya でリトポロジーをします。最後に ZBrush に戻して[パネルループ]で適切な厚みを与えます。
Tシャツは Marvelous Designer で作成し、Maya に書き出してリトポロジー、ZBrush で厚みを加えました。
帽子のディテール
Marvelous Designer で Tシャツを作成
06 ZBrush での UVマッピングとポージング
すべてのパーツが完成したら、各サブツールをサブディビジョンレベル1でエクスポートして Maya に読み込み、UVを作成します。まず、[3D カットと UV 縫合ツール]で各モデルを切り開いて展開し、すべてのパーツのテクセル密度を統一します。今回は UDIM を使用しているため、各オブジェクトが複数のタイルに収まり、クローズアップショットでも十分な解像度が得られます。
UVを作成したメッシュを ZBrush に戻し、UVをサブツールにコピーしたら、ポージングに入ります。ここでは、コンセプトにできるだけ忠実に合わせるため、ZBrush の「スポットライト」機能を使って 2Dと3Dを照らし合わせながら作業します。2D画像は特定の角度から見たものですが、その角度で合わせつつ、どの角度から見ても自然に見えるようにすることが大切です。
「スポットライト」を使って 2Dのポーズに合わせる
UDIM
07 Substance 3D Painter でテクスチャリング
いよいよ Substance 3D Painter での作業です。スタイライズされたテクスチャをベースにしながら、使い込んだ感じや汚れなど、リアルな要素も取り入れていきます。Tシャツのデザインにはいくつかのアイデアを試しました。最初はリファレンス画像に近い「タイダイ柄」でペイントしてみましたが、主張が強すぎたのでボツにしました。
スペキュラマップの描き込みには時間をかけてください。ライトが当たった状態や遠くから見たときに、仕上がりを大きく左右するのはスペキュラマップです。テクスチャリングの基本ワークフローは、マスクを使ったフィルレイヤーの組み合わせ、プロシージャル、そして大量の手描き作業になります。色使いの工夫も目を引く作品を作るうえで欠かせません。とにかく楽しんで進めてください。
初期段階のタイダイ柄Tシャツ
頭部のテクスチャリング
衣装のテクスチャリング
手描きのスペキュラマップ
08 XGenでヘアを作る
ヘアの制作には Maya の XGen を使用します。まず ZBrush でスカルプトしたヘアをデシメートしてエクスポートし、プロキシガイドとして使用します。次にローポリメッシュを頭皮ごとに分割し、XGen でヘアを「生やす」ための土台とします。各頭皮に対してコレクションとディスクリプションを作成します。
セットアップが完了したら、スカルプトしたヘアのシルエットに沿うようにガイドを配置します。大きなクランプから小さなクランプへと順に追加し、ノイズやカット モディファイア、ストレイヘア(ほつれ毛)のエクスプレッションをモディファイアスタックに重ねていきます。眉毛や顔の毛も同じワークフローで制作します。
スカルプトしたヘアをリファレンスとして使用
ガイド作業用のメッシュ頭皮
XGenモディファイアスタック
09 Mayaでのライティング
ライティングはキャラクターの個性を引き出す重要な要素です。ここでは、50%サイズの素早いレンダリングを繰り返しながら、さまざまなライトの組み合わせを試しました。
HDRIライトも多数テストしましたが、想定よりも「狡猾で怪しげな」印象になってしまうものもありました。最終的に、キーライトを真上に配置した3点照明を採用しました。このセットアップはキャラクターに怠惰な印象を与え、その個性にぴったりとはまりました。テクスチャリングと同様、ライティングも試行錯誤が大切です。ライトは仕上がりに大きな違いを生むので、楽しみましょう。
ライトのセットアップ
10 Arnold でレンダリング
レンダリングには Arnold for Maya を使用します。デフォルト設定でも良好なテスト結果が得られますが、最終的な美しいレンダリングを行うには、ノイズ除去のために設定を上げる必要があります。その分、レンダリング時間は増えますが、CPU の性能が高ければ大きな問題にはならないでしょう
ポストプロセスの手間を減らしたかったので、被写界深度は Maya のカメラ機能を使って設定しました。これなら、Z深度パスをレンダリングして Nuke で合成する方法よりも、正確で自然な仕上がりになります。
Arnoldレンダリング
プロのヒント:被写界深度の調整
立方体のプリミティブを使用して、カメラからの距離を測定し、キャラクターがより鮮明に映るようにします。今回は顔にピントを合わせ、周囲を柔らかくぼかしました。このエフェクトはさじ加減が大事で、かけすぎるとキャラクターがミニチュアのように見えてしまいます。
被写界深度を設定するのに参照する立方体
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